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森林が大気中マイクロプラスチックを捕捉することを世界で初めて実証--ヒトによるAMPs吸入リスク低減において森林が重要であることを明らかに--

Digital PR Platform / 2024年3月27日 14時5分


(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
 一般に、植物の葉面には、エピクチクラワックスやトライコーム*4といった構造が存在し、こうした構造が葉面でのAMPsの捕捉に影響を与える可能性があります(図2)。例えば、AMPsはトライコームに物理的に捕捉されたり、プラスチックの有する親油性によってエピクチクラワックスに吸着されたりする可能性があります。
 以上をふまえて、本研究では、先行研究で用いられていた超純水による葉面洗浄に加え、超音波洗浄とアルカリ洗浄を実施することで、葉面に捕捉されたAMPsの除去効果を検討しました(図3)。大気汚染物質に関する既往研究から、弱い超音波洗浄はトライコームをはじめとする表面の物理的な構造によって捕捉されたAMPsの回収に有効であり、アルカリ洗浄によるエピクチクラワックスの溶離は、吸着したAMPs回収に有効であると考えられます。そこで、これらの洗浄方法を同一の葉に順次行うことで、各洗浄方法の評価を行い、葉によるAMPs捕捉機構を推定しました。



 調査地は、神奈川県川崎市にあるに日本女子大学 西生田キャンパスです(図4)。西生田キャンパスは、東京都心から南西に約19 kmの距離に位置し、校地面積(293,800 m2)のうち約6割が森林に覆われた都市域に存在する小規模森林です。西生田キャンパスは、AMPsの主要な発生源と考えられる都市近傍に存在することから調査地として選択しました。西生田キャンパスの主要樹種であるコナラの葉を、2022年6月21日および8月9日に採取しました。なお、コナラは日本における主要な広葉樹でもあります。
 これらの葉は、前述した方法で洗浄した後、AMPsを抽出する処理を行なった上で、μ-FTIR-ATRイメージング測定*5(PerkinElmer, Spectrum3 Spotlight400)を用いて分析しました。

 その結果、超純水洗浄、超音波洗浄、アルカリ洗浄と段階を経るごとに検出されるAMPs量が上昇し、アルカリ洗浄で最大量のAMPsが回収されました。また、葉面観察の結果、超純水洗浄では葉の上に捕捉されたAMPs、超音波洗浄ではトライコームに物理捕捉されていたAMPs、アルカリ洗浄ではエピクチクラワックスに吸着していたAMPsがそれぞれ洗浄されたと推測されました。
 以上から、AMPsの主要な捕捉メカニズムとして葉面エピクチクラワックスへの吸着が機能しているということ、さらにエピクチクラワックスに吸着したAMPsは超純水や超音波を用いた洗浄では十分に回収できないのに対し、本研究で考案したアルカリ洗浄によって適切に回収できることが明らかになりました。また、この方法を用いて日本全体のコナラ林(約32,500 km2)には年間で約420兆個もの膨大な量のAMPsが捕捉されていると推計され、AMPsのシンクとして森林が機能している可能性が高いことがわかりました。

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