地下深部の極限的な環境に常識外れな古細菌を発見-メタン生成古細菌がメタン生成能を失う適応進化-
Digital PR Platform / 2024年6月13日 20時5分
概要
理化学研究所(理研)開拓研究本部鈴木地球・惑星生命科学研究室の鈴木志野主任研究員、海洋研究開発機構超先鋭研究開発部門の石井俊一副主任研究員、東京薬科大学生命科学部の田中勇吾博士前期課程学生(研究当時)、高妻篤史助教、渡邉一哉教授、東北大学・海洋研究開発機構変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)の稲垣史生上席研究員らの国際共同研究グループは、マントル由来の岩石域から湧出する強アルカリ[1]・超還元的[2]な地下湧水や海洋熱水中に、メタン生成能を失うという常識外れな適応進化を遂げた「元メタン生成古細菌」が広く分布することを発見しました。
メタン生成古細菌は、一般に水素と二酸化炭素からメタンを作ることで生存しています。詳細な解析の結果、地下湧水「ザ・シダーズ」に生息する元メタン生成古細菌は、水素ではなく、還元性の高い鉱物から電子を直接受け取る能力を持ち、それを用いて二酸化炭素を固定し、最終産物として酢酸を作ることで、本環境で効率的に生息している可能性が示されました。本研究成果は、微生物の持つ炭素固定経路の適応進化戦略の解明とその利用、惑星における生命生息可能性(ハビタビリティー)の理解に貢献することが期待できます。
本研究は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(6月13日付:日本時間6月13日)に掲載されます。
背景
地球の上部マントルの主要な構成鉱物であるカンラン岩は、水と反応すると蛇紋岩(じゃもんがん)と呼ばれる鉱物に変質すると同時に、水素を多く含む強アルカリ性の極めて還元的な流体(蛇紋岩流体)を生じさせます。「蛇紋岩化反応」と称されるこの一連の鉱物-水反応は、初期地球や初期火星、また土星の衛星エンセラダスなどで、現在の地球よりも広範囲にわたって起こっていた(起こっている)と考えられています。
蛇紋岩化反応が起こっている地質環境(蛇紋岩化反応サイト)では、水素分子と二酸化炭素が非生物的に反応し、メタンやギ酸、場合によっては酢酸のような単純な有機分子を生成することが知られています。これらの非生物的反応が、生物の炭素固定、中でも、水素栄養メタン生成古細菌(CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O)や酢酸生成細菌(2CO2 + 4H2 → CH3COOH + 2H2O)の炭素固定経路に似ていることから、生命の初期的な炭素固定は蛇紋岩化反応サイトで誕生した可能性が提唱されてきました。
一方で、これまでに、実際の蛇紋岩化反応サイトに生息するメタン生成古細菌の代謝経路に関する詳細な情報は明らかになっていませんでした。そこで国際共同研究グループは、まず、現存するメタン生成古細菌や酢酸生成真正細菌の代謝経路、および、その駆動力と制約条件を明らかにすることで、本環境における代謝の最適解を得ることを目指しました。
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