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光量子状態の高速生成 ~光通信技術による光量子コンピュータの加速~

Digital PR Platform / 2024年11月1日 19時0分


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/98211/700_658_20241101094618672424da61d0a.png


発表内容
〈研究の背景〉
 量子コンピュータの実用化に向けては、乗り越えるべきさまざまな課題が存在します。どのような物理系でも大きな課題となっているのは、計算スケールの大規模化(スケーラビリティ)と誤り耐性の実現です。スケーラビリティの実現は、研究開発段階の小規模なシステム(~数百量子ビット)をいかにして現実問題に必要な大規模システム(数百万量子ビット~)に拡張できるかという課題に言い換えることができます。特に外乱に弱く複雑な量子システムでは、小規模から大規模な量子計算のシステムへの発展の手法は明らかではなく、多くの物理系において実用量子コンピュータ実現のボトルネックとなっていました。これに関して東京大学古澤研究室の研究グループは、2019年にスケーラブルな光量子計算プラットフォームを実現し(関連情報2参照)、他の物理系と一線を画す強みを有しています。
 誤り耐性の実現については、現実のシステムでは必ずノイズやエラーが存在するため、エラーが生じうる環境下でも量子情報処理を正しく実行する仕組みが必要となります。その1つの方法は、誤りを検知し訂正できる「論理量子ビット」による量子情報のエンコードです。これについても本研究グループでは、GKP量子ビットと呼ばれる最有力な論理量子ビットの生成に世界で初めて成功し、2024年にプレスリリースを行っています(関連情報1参照)。しかしながら、このGKP量子ビットの生成手法ではシュレディンガーの猫状態と呼ばれる非古典性が強い量子状態を、複数用いる必要があります。従来の光学系ではシュレディンガーの猫状態の生成レートがkHzオーダーに留まっているため、この状態を複数用いるGKP量子ビットの生成レートはさらに低くなってしまいます。現状では、この生成レートが量子計算速度を制限しており、この解決なくしてGKP量子ビットによる誤り耐性型光量子コンピュータの実用化は困難です。
 この生成レートの制限は2つの原因に由来します。1つは量子光源であるスクイーズド光源の周波数帯域です。確率的な量子状態の生成レートは「試行回数」と「成功確率」の積によって決定されます。例えば、試行回数が100MHzで成功確率が0.1%の場合、おおよそ100kHzの生成レートとなります。「成功確率」は量子状態の種類や生成手法によってほとんど決定されるため、実験的な工夫によってはあまり変動しません。したがって、「試行回数」を向上させることが重要となりますが、単位時間当たりの「試行回数」を制限するのが、光源となるスクイーズド光源の帯域となっています。また2つ目に、光源に加えて量子測定も制約を与えます。スクイーズド光源の帯域は生成レートだけでなく、生成される量子状態の波束の形状も決定します。この波束に定義された量子状態を正しく観測するためには、それよりも十分広い周波数帯域を観測可能なホモダイン測定器が必要となります。従来の量子光学の実験での各要素の典型値としては、スクイーズド光源の帯域は高々MHzオーダーで制限されており、またホモダイン測定器の帯域は高い量子効率の確保のため100MHz程度に制限されてきました。

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