光量子状態の高速生成 ~光通信技術による光量子コンピュータの加速~
Digital PR Platform / 2024年11月1日 19時0分
〈研究の内容〉
本研究では、OPAをスクイーズド光源として、数MHzのスクイーズド光源の帯域を6テラヘルツ(THz、約100万倍)に拡張しました。さらに、ホモダイン測定器の前にOPAを量子的な位相敏感増幅器として用いたことで、測定系を100MHzから70GHzに高速化(700倍)し、高速な光量子状態の生成を実現しました。このOPAを補助的に用いた高速ホモダイン測定技術は、東京大学とNTTの研究グループが実験的に確立した新技術であり、本研究ではこれを初めて非古典的な量子状態生成へと応用しました。
図3に、生成したシュレディンガーの猫状態のWigner関数及び波束形状を示します。この状態の生成レートは約1MHzに達しており、従来のシュレディンガーの猫状態生成と比べて3桁程度生成レートが改善されています。
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2341/98211/700_258_202411010949186724258e90be6.png
Wigner関数の負値は量子状態の量子性を表すものである。波束形状については、サブナノ秒スケール(従来は数十~数百ナノ秒程度)の波束の測定に成功しており、本研究で実現した高速測定の有用性を示している。
現状の系ではホモダイン測定系の帯域が70GHzになっていますが、光子検出器の性能が量子状態の帯域を1GHzへとさらに制限しています。もしもホモダイン測定器の帯域全体を使うことができれば、さらに70倍の高速化が見込まれます。従来の非古典的な量子状態生成の実験では、光子検出器が最も高速かつ広帯域な素子として動作していました。一方で、今回の光源及び新規の高速な測定手法の確立によって、光子検出器の性能による帯域の制限についても、実験的な観測が可能となりました。これにより得られた新たな知見は、光子検出器のさらなる改良につながることが期待されます。
〈今後の展望〉
今回の高速な光量子状態の生成手法と2024年のGKP量子ビット生成のプレスリリース(関連情報1)の手法を組み合わせることによって、現実的な生成レートを持つ論理量子ビットの生成が可能となります。また、従来は実証実験レベルでも生成が困難であった複雑かつ有用な量子状態の生成も現実的となり、光量子コンピュータの開発が飛躍的に加速することが期待されます。
〇関連情報:
(1)「プレスリリース:伝搬する光の論理量子ビットの生成 ―大規模誤り耐性型量子計算への第一歩―」(2024/1/19)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-01-19-001
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