新潟国際アニメーション映画祭 昨年の手ごたえ、今年の見どころをディレクター、プロデューサー陣に聞く
映画.com / 2024年3月6日 19時0分
真木:改めてそう感じましたね。みなさん審査員長を務めた押井守さんへのリスペクトもあり、コンペに出品した監督たちは「押井さんに見て審査してほしかった」と言っていました。そういう言葉をリアルで聞くと、日本のアニメーションの強み、層の厚さを感じます。
数土:今回、審査員長をお願いしたノラ・トゥーミー監督はお子さんがいらっしゃって、日本のアニメの大ファンだそうで。あの大監督のお子さんも日本のアニメが好きなんだ、と知るとうれしくなりますね。
――作品上映だけでなく、ワークショップやフォーラムなど、作り手から学ぶイベントも行われますね。
真木:例えば去年の押井さん、今年もいらっしゃる片渕さんのような方々の生の話を聞けるチャンスなんてそうそうないですからね。海外の方も業界を目指している若い人にとっても、それはものすごい刺激となって、深い思い出になると思います。
井上:大学の講義や講演だと距離が遠いですが、新潟はゲストとの距離が近いのもいいんですよね。
数土:去年は大友克洋さんがご自身でフライヤーを配ってらして。都心でやったら大騒ぎになると思うんですよ。あれは新潟だったからできたことだと思います。
▼今年のラインナップについて 世界のアニメーションに触れられる貴重な場
――今年も豪華なラインナップです。井上さん、真木さんは日本のアニメーション業界を代表するプロデューサーとしてもご活躍ですが、昨年の映画祭を通して、海外の作品から刺激を受けたり、新しい発見もあったのでしょうか?
井上:すべての作品は見られませんでしたが、とても刺激になりました。コンペティションだけではなく、世界の潮流部門もいくつか拝見しました。日本の影響もありつつ、日本とは全く異なる価値観で作られている作品が多いですね。アイルランドの神話を描いた「ウルフウォーカー」のように、日本の作品と同じくストーリー重視で画が綺麗なタイプの作品もありましたし、ブラジルの「父を探して」はとても社会批評的な観点で作られていて、メッセージ性が強かった。日本ではテーマをオブラートで包んで見せる表現が多いですが、世界には様々な見せ方があると印象に残りましたね。
真木:世界のアニメーションを見られる機会が貴重なんです。アニメーションってものすごく多様性があって、こんなテーマで、こんなストーリーで作るのか……と発見があったのが驚きでした。日本のアニメはすごく限られた中で進化していて、どちらかというと縦に伸びているイメージ。でも、多様性の表現として横にも広がってほしい。この映画祭で刺激を受けた日本のクリエイターに、これまでとは違うものを作ってほしいんです。いずれにせよ、クリエイターは進化して、変わっていかなきゃいけない。この映画祭はそんなきっかけになると思うんです。作品を見たら、みんなびっくりすると思います。
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