オノ セイゲンPresents<映画の聴き方> Vol3. 加藤和彦さんの話 「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」相原裕美監督と対談
映画.com / 2024年6月8日 8時0分
それまでは相原監督と同じく1リスナーです。この映画を通じて加藤和彦さんという天才が広く若い人に知られたらいいな、と思います。相原監督の目線は新鮮なんです。まったくの俯瞰ですから。加藤さんって新発明みたいなことを毎回試していくアーティストで、スタイルがどんどん変わっていくのをうまくまとめましたね。
ベルリンは、70年代にデヴィッド・ボウイの「LOW」で有名になった、ハンザ・トン・スタジオで録音していて、当時、西側のアーティストが一番行きたいスタジオだった。第2次世界大戦後のベルリンの壁の横にあってホール(今はないらしい)は連合軍の将校クラブだったのです。東側の体制を感じられるということで、多くのミュージシャンがエッヂなものをつくるために通ったのです。
相原:もともとはブライアン・イーノがベルリンに住んでいたんだよね。加藤さんはボウイのようなグラムロックに惹かれてサディスティック・ミカ・バンドを作ったわけだから、「LOW」の影響はあったのかもしれないね。
セイゲンさんがパリで加藤さんに会ったときは、87年にリリースした「マルタの鷹」というアルバムのレコーディングで滞在されていたようです。フランスのシャトースタジオは、田舎のスタジオで電圧も不安定で、シャワーもお湯が出ない、楽器も届いてないという感じだったみたいですね。「ポリス」とかも使っていたからいいだろうと思ったらしいんですが、響きのために場所が広くて大きいだけで他は何もないから設備の面でえらい苦労したみたいです。
オノ:さすがドキュメンタリー監督の調査・取材力! その後シャトースタジオでミックスしたんですね、きっと。相原監督の時代考証と記録としてのレコードがトリガーとなって、これで87年の秋のパリが見えた(笑)。
相原:「帰って来たヨッパライ」のようなフォーク、そしてサディスティック・ミカ・バンド、ヨーロッパ3部作、加藤さんの音の作り方の変遷でセイゲンさんは気になったことはありますか?
▼常に新しいものを生み出す加藤和彦さんの才能。そして思い出
オノ:それは響きへのこだわりですね。それは楽器の音だけじゃなくて。楽器をどこに置くかで初期反射音が変わります。そういったことを加藤さんと一緒にやっていたのが、ザ・フォーク・クルセダーズ再結成の時。ようやくベルリン三部作を聞いて、これはハンザでの収録だとか、すぐにわかりましたね。ハンザは82年から僕も4、5回行きましたので。
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