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オノ セイゲンPresents<映画の聴き方> Vol3. 加藤和彦さんの話 「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」相原裕美監督と対談

映画.com / 2024年6月8日 8時0分

相原:そんな風に音を聞いていただけでわかるものなんですか?

オノ:もちろんですよ。80年代っていまほどサンプリングもできなかったし。この楽器を使うなら、このスタジオ、これだったらどこのホールみたいな感じで決めて、あとはマイクをどこに置くか……そうやって音を作っていた。アナログですが当たり前のことを真面目に掘り下げて僕と加藤さんはやっていました。

 しかも音は早く決められないとだめで。でも決めた後に出た音に対してガラッと変更が入ったりも。アーティストに抽象的に言われた音、音色を具現化するのがエンジニアの仕事ですから。音作りってどこか料理みたいなんです。

▼グルメだった加藤和彦さん

――セイゲンさんは坂本龍一さんはじめ様々なアーティストと仕事をされていますが、加藤和彦さんならではの特異点はどんなところでしたか? 現場でのエピソードなどあれば教えてください。

オノ:僕なんかが知っている加藤さんはほんの一部分でしかありません。「帰って来たヨッパライ」教科書にも載る「あの素晴らしい愛をもう一度」「悲しくてやりきれない」などの作曲者、そしてザ・フォーク・クルセダーズですね。映画に出てくるミカバンドの「黒船」やBBCでの活躍なんか、実は相原監督からこの映画の制作準備過程で教えられたといいますか。自分が録音に携わっていた数年間のその現場のことしか知りません。

 坂本龍一さんは友人でしたが、YMOのアルバムは一枚も持っていません。買わないでもいつもラジオで流れてましたよね。たまたま82~85年とcommmonsになってからの録音現場やその頃だけは仕事もプライベートでお世話になったといいますか。番組編成や音楽ライターさんはある意味、研究者ですから全部の作品を聞いてますよね。僕にはそんな時間ないんです、当時のスタジオに住みこみですから(笑)。

 僕が関わったのは、ザ・フォーク・クルセダーズとスーパー歌舞伎でした。アコースティックギターが本当に上手かった。すごいアコギをいっぱい持っててね。

相原:セイゲンさんがマスタリングしたサディスティック・ミカ・バンドの「サイクリング・ブギ」のギターも上手かったよね。

オノ:現場ではね、録音が楽しいんですよ。坂本さんもそうだったけど、うまくいかないとスタッフにイライラしたり、あと自分がやりたいことをやらせてもらわないときっと怒るタイプ(笑)。

 僕がちょっと後悔してるのは、大先輩だから友達みたいにはしゃべれないですよね。加藤さんは躁うつを患ってらっしゃったのですが、僕と会っているときはいつも超ハッピーで、レコーディング大好きなんですよ。音のことや食べ物のことを話してくれました。映画にもその話題が出てきますが超グルメで。

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