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大奥を舞台に“新社会人あるある”を描く 「劇場版モノノ怪 唐傘」中村健治監督インタビュー

映画.com / 2024年7月18日 19時0分

 なので今回は、色がくすんでいるという感想をもった人に向けて、色がくすんでいない「モノノ怪」をお届けしてみようと考えたんです。これが地方の豪族のさびれたお城が豪華絢爛(けんらん)だったら違和感がありますが、大奥が舞台ならちょっとぐらい派手にしてもいいだろうと、いろいろな国の人が好きなビジュアルをスタッフみんなで調べて、色のバランスを調整しました。

 「モノノ怪」のビジュアルは、和紙みたいな画面だとか、浮世絵みたいだとかよく言っていただくのですが、制作工程上の話をすると、細かくいろんなことをやらないと、こういう絵にはならないんですよ。何かしらのフィルターをぽんとのせれば、こういう画面になるわけではなく、その前段でいろいろな工程のスタッフたちが呼吸をあわせるためのルールがけっこうな量あるんです。そうした全体的な決め事は、これまでのシリーズから基本的に踏襲しているのですが、今回はそのルールのひとつひとつの中身を検討しなおした感じです。

 例えば、「劇場版モノノ怪 唐傘」では、背景がよりあざやかになったのにあわせて、主線(※キャラクターなどを描く線)に「北斎ブルー」という葛飾北斎が使っていた色を使っています。テレビシリーズでも青は使っていたのですが、今回のあざやかな背景に北斎ブルーをあわせると青なのに黒に見えて、よく見ると青だと分かる。北斎さんはやっぱりすごいなと僕らは思いながら使わせてもらっているのですが、そうしたひとつひとつの要素を吟味しながらチョイスしていった結果、“なんとなく”がほとんどない画面が続いて、ねらったところをせめるような画面で全編構成されるような作品になりつつあるのかなと。もちろんそれは見た人次第なんですけれど、そんな感じになっているといいなっていう。

――「ねらったところをせめるような画面」というところを、もう少しくわしく教えてください。

中村:そうですね……。基本的には絵コンテの描き方にもいろいろとルールがありまして、他のインタビューでもよく話しているのですが、例えばレイアウトで言うとミドルショットは使わない。(カメラが)引くときは引く、寄るときは寄る。ミドルショット自体が悪いわけではありませんが、「モノノ怪」では基本的に点数が低い絵になるのであまり使わない。そういうことは、すごく気をつけてやっています。

 演出の専門用語で言うと、上手下手(かみて・しもて)やイマジナリーラインのような、ようするにキャラクターの移動方向は常に一定にしなさいみたいなことは逆にやらないで、どうしてもやる場合は極力減らしてください、というふうにお願いしていて、あまりに普通のカット割りが続いている場合は、僕のほうでコンテを修正させてもらっています。そういうところが、「モノノ怪」っぽさをかもしだしているのかもしれません。

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