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【50歳記念インタビュー】井浦新が語り尽くす、俳優デビューから現在までの25年間

映画.com / 2024年9月15日 11時0分

■「俳優業は僕の中では天職でしかないと言い切ることができる」

 映画以外の場で井浦の姿を見かけるようになったのは、13年から18年にかけて司会を務めたNHK「日曜美術館」が最たる例といえるかもしれない。もともと日本文化への造詣が深く、興味の対象は美術や伝統工芸にまで及ぶ。直近では、国立民族学博物館の吉田憲司館長との対談に大きな刺激を受けたようだ。

 「国立民族学博物館(以下、みんぱく)は大好きな場所で、これまでも幾度となく通っている場所なのですが、今年に入って館長からお声かけいただき対談を行いました。専門的な知識はないのですが民俗学、考古学、博物学が好きでずっと楽しんできたので、興味深いお話をうかがうことができました。

 館長から俳優についても色々と聞いていただきました。僕の中で俳優の面白さや突き詰め方、それは芝居を磨くというよりも人間を想像しながら作っていくことに楽しみや喜びを感じているということ。かつて俳優や芝居というものに全く興味をいだかなかった人間なのに、人間を表現することが好きだからこそずっと続けてこられた。今では俳優業は僕の中では天職でしかないと言い切ることができますと。

■腑に落ちた「文化人類学的な芝居のアプローチ」

 また、僕は旅をして色々な人と出会うことを楽しんでいるのですが、たとえば道を尋ねた農家の方の手や背中の曲がり方、声の質感、日焼けの仕方などが、僕の人間のライブラリーの中にどんどん記憶されていくんです。作り出したプロダクトにも興味はあるけれど、僕はそれを作る人にフォーカスしていく。日常的に人を研究しているようなイメージで、意識の持ち方次第で研究対象はどこにでもいる。僕が旅を好きな理由は、そこにあるのかもしれません。

 そういうお話をしていると、館長が面白い解釈をしてくださったんです。『あなたにとってのお芝居は、文化人類学的な芝居の仕方なんじゃないか』と。僕の中ではもの凄く腑に落ちて、『それだ!』と。

 何で芝居をしているんだろう?と突き詰めて考えていくと……。上手くはなりたいけど、下手でありたい。テクニックを磨くために集中すると、途中で飽きたりもする。ただ、テクニックを放棄したらつまらない。館長がおっしゃる通り、民俗学的な眼差しで人を見て、文化人類学的な俳優をしているのだと考えると、四半世紀続けて来られた理由になると腑に落ちました。

 こういう話をするのは、今回が初めて。誰かに言われる前に、絶対に記録しておいてほしかった。そういう俳優がいてもいいですよね。学校の勉強はダメでしたが、美術や民俗学などを楽しむことは好きでした。だから書籍の長い文章でもワクワクしながら読めましたし、本物に出合うこともできた。具体的に表現する言葉を発見できずにいたのですが、『文化人類学的な芝居のアプローチ』。これは僕のやっていること全てを言い表しています」

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