【50歳記念インタビュー】井浦新が語り尽くす、俳優デビューから現在までの25年間
映画.com / 2024年9月15日 11時0分
■「50歳」の実感
約20年前の話を愛おしそうに語る井浦は、決して器用なタイプではない。それでも現在の多ジャンルでの八面六臂の活躍ぶりの土台は、この時期に慎重な姿勢を崩さなかったからこそ構築できたのではないかと推察する。今回の取材は、井浦の50歳の誕生日を記念してのものなので、改めて聞いてみた。「50歳という節目の年となりますが、実感はありますか?」と。
「もしも体調に異変があったりしたら、実感することがあるのかもしれませんが、まだ実感としてはない。先に50歳になった先輩たちから聞くと、30歳や40歳になったときよりも感じるものがあるのだと。実は僕はゾロ目が大事だと思っていて、30歳よりも33歳、40歳よりも44歳で実感を味わえてきた。だから今回も55歳くらいでしみじみ感じるのかな。
僕自身が、自分の記念日的なことに対して何も思わず過ごしてきちゃったんです。自分以外の周年を祝うのは楽しくて好きなのですが、自分の周年はどうでもいいや…と思ってきちゃった。今回も『ワンダフルライフから25年ですよ』って今回の取材で言われるまで気づきもしなかった。今まで無頓着すぎましたが、50代も楽しくなったらいいなとは思います」
■12年前、箱根で見せた清々しい笑顔
筆者が井浦の取材を本格化させたのが、亡き若松監督の作品だった。井浦にとって「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を皮切りに、「キャタピラー」「海燕ホテル・ブルー」「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」「千年の愉楽」とライフワークのように出演し続けた若松監督との突然の別れは想像だにしなかったに違いない。
若松監督を見送った2カ月後の12年12月22日、井浦の姿は神奈川・箱根にあった。箱根彫刻の森美術館で初の写真展「空は暁、黄昏れ展」を開催する井浦と若松監督のことを少しでも話せたらと思い、車を走らせた。当日までの約2週間、箱根に滞在し会場設営に追われていた井浦は、清々しい笑顔を浮かべながら家族を紹介してくれた。
そして、「初めての個展ですが『知っているぞ、この感覚』という状況がいくつもありました。学芸員の方をはじめとするチームと毎日顔を合わせ、日に日に一体感が出てきて“家族”になっていけた。映画の現場での経験が生かせました」と充実感をにじませていたことはいまも鮮明に記憶している。
「あの日は久々に家族に会えたんです。追い込み作業のとき、美術館側にお願いして宿に戻らず、インスタレーションで展示するテントに寝起きしながら朝まで微調整を続けていました。映画の現場でもないのに、箱根まで来てくださって……嬉しかったことを覚えています」
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