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菅田将暉が発した“観客の目を引く曖昧さ” 黒沢清監督と初タッグ、改めて芽生えた映画への愛

映画.com / 2024年9月28日 11時0分

 やりたがっていましたよね、青山は菅田さんともう一度――。多分、青山が予想していたよりも、菅田さんはどんどんと売れっ子になっていき、さまざまなものに出ていかれた。青山の発想が追いつけなかったんでしょうね。

――菅田さんは、青山監督から黒沢監督のことを何かお聞きしていましたか?

菅田 僕に対して「黒沢作品とはこうなんだ」と細かく仰ることはなかったですが、ロカルノ映画祭でお会いした時が印象的で、青山さんがあまり見たことのない表情で黒沢さんと喋っていたんです。1発でほぐれているというか、心の何かを許している存在なんだろうなと。ウキウキ楽しそうで、いつもより少年っぽい感じが増していましたし、お酒もいつもより進んでいたかな。ワインを美味しそうに飲みながら、すぐに酔っぱらっちゃって、真っ赤な顔になっていて――黒沢さんと話すことが、本当に楽しいんだろうなと思いました。

●菅田将暉の絶妙な両義性「“観客の目を引く曖昧さ”できちんと演じる。これが物凄い」

――黒沢監督は、第81回ベネチア国際映画祭でのワールドプレミア上映が決定した際、「菅田将暉の善人とも悪人ともつかない絶妙な両義性が、この幸運を引き寄せてくれたのでしょう」とコメントを出していました。菅田さんの“両義性”は、「Cloud クラウド」にとって重要な要素でしたか?

黒沢監督 要(かなめ)だと思っています。菅田さんが演じてくれた吉井という役は、俳優にとっては“演じるのが難しい役”なのでしょう。脚本を書いている時には、そうは思わなかったのですが……。つまり“普通の人”を演じるということ。吉井は、際立ったわかりやすい感情表現というものをしませんし、その一方でただ押し黙ってるような“もの静かな人”ではない。ごく普通に生活を営んでいる人物――菅田さんは、見事な曖昧さで演じてくれたのです。

 そして“観客の目を引く曖昧さ”できちんと演じる。これが物凄い力だなと思いました。下手な俳優がただ曖昧に演じてみると、単にわけのわからない、印象に残らない“希薄な人”になっていきますから。

 「いいよ」という返事ひとつをとっても、それが本当に良いのかどうかわからない。喜んでいるのか、困っているのか。「一体、どっちなんだろう」というクエスチョンが残るような曖昧さを的確に出してくれていました。そんな“曖昧”な吉井が、生きるか、死ぬかという曖昧では済まされない状況に陥ってしまう。これが「Cloud クラウド」の大きな流れになっていて、菅田さんの演技に導かれ、観客もいつの間に極限状態を味わうことになるでしょう。

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