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【職業は映画監督と米農家】「侍タイムスリッパー」安田淳一監督、預金残高7000円になっても譲らぬ矜持

映画.com / 2024年10月2日 19時0分

――昨年末の川崎市での試写会の時も、冨家ノリマサさんから、監督がこの映画のために自己資金を投入し、一時期は監督の通帳残高が7000円しかなかったと暴露されていました。

 安田:撮影時は本当に大変でした。今回だいぶ無茶しましたからね。車も売りましたしね。本当に大変でした(笑)。

――今回の作品は、過去の2作品と比べても幅広い層に向けたような、よりエンタメ方向に振り切った印象がありましたが、これまでと何が違ったところはあったのでしょうか?

 安田:やはり「拳銃と目玉焼」は、ターゲットをどこに向けて作ったらいいのか分からなかったから、40代後半の自分みたいな男性が面白がるものをつくろうと。そうしたら、ほんまに40代後半の男性だけが熱狂的に愛してくれはったわけですが、それこそ大赤字。次の「ごはん」は、地方の公民館で上映できるような映画にしたいなと思って。自分自身の人生と照らし合わせて、お米農家を継ぐ女の子の話を作ったんです。映画館での公開後、全国の公民館などで農業関係、教育関係、映画好きの団体、いろんなグループが自主上映して頂いて、36カ月も上映が続き1万2000人以上動員して製作費を回収しました。

 そんなときに、仲間たちと「さぬき映画祭」のショートムービーコンペティションに参加したんです。グランプリ作品はお客さんの投票で決まるんですが、僕たちがつくった作品は2位とか3位にしかならなかった。最初はなんでかなと思っていたんですが、どうも観察してると、だいたい優勝する作品はみんながゲラゲラ笑うようなものだったんです。だったら僕も、3年目はちょっと笑えるやつにしようと思って。笑える作品にしたらグランプリをいただけた。やはりお客さんって笑えるものが好きなんやと思ったのと同時期くらいに、「カメ止め」の大ブームが起こった。劇場で「カメ止め」を観た時に、お客さんがゲラゲラ笑っていて。終わったときに拍手が起こるという現象を目の当たりにしたんです。その時に、やはりインディーズ映画でも、陽性の笑える映画だったら、インディーズの枠を超える広がりがあるんだなと実感して。次撮るときは絶対、笑いのある映画にしたいと思ったんです。

 それで「カメ止め」は何が面白いんだろうと思って勉強してみたんですが、あの作品は前半37分でまかれた伏線を、後半でどんどん回収して爆笑をかっさらう。今まで見たこともないような構造がものすごく特殊だし、発明だなと思ったんです。そんな時、お侍さんが現在にタイムスリップしてくるというテレビのCMを見て、「ごはん」にも出ていただいた福本清三さんを思い浮かべました。タイムスリップした侍が、斬られ役を目指すという話だったら面白そうだなと思ったわけです。その時は普通の面白いだけのストーリーだったんですが、そこでお客さまが笑えるようなやつにしなきゃあかんなと思って。脚本を書く段階で、笑いの要素とクライマックス感を足していったという感じです。

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