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安藤チェアマンが総括する第37回東京国際映画祭

映画.com / 2024年11月12日 11時0分

――センターピースとして上映された「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」は、まさしくそういう意味でのセレクションですよね。もちろん作品のクオリティは映画祭が担保しつつも、幅広い観客層に楽しんでもらえるラインナップを意識した。

 安藤:そうです。「劇場版ドクターX」や「劇映画 孤独のグルメ」、「エマニュエル夫人」も同様です。それはそれでセレクションは大変ですが、どれも映画祭として自信を持って送り出せる作品。映画祭には、非常に芸術性の高いものも、エンタテインメント性の高いものもあることを、幅広い層に知っていただけるとうれしいです。

――「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」では、デンゼル・ワシントン、コニー・ニールセン、フレッド・ヘッキンジャーが来日し、同作品のためにあつらえたレッドカーペットを歩き、様々なメディアで話題となりました。東京国際映画祭はだんだん地味になっていくと言う方もいらっしゃいますが、それはまだ名前を知らない映画人の作品や、プロモーションが行われて話題になる前の作品が並ぶから。でも映画祭とは素晴しい作品と、それに携わった映画人が“発見”され、発信される場所。参加者は最初の観客なので派手も地味も判断できない。だからそんなふうに感じてしまうかもしれません。その代わり、映画との思いも寄らない素晴しい出合いもあるわけですよね。

 安藤:東京国際映画祭に対して、先入観をお持ちの方もまだ多いのだと思います。実際、海外の映画祭と比較して「負けている」などと言われることもありますが、僕はラインナップ含め、今年の内容に自信を持っています。

――ぜひ参加され、どう感じたか、ご自身の感想をいただきたいですね。

 安藤:はい。東京国際映画祭はまだまだステレオタイプに語られてしまうのが、悲しいところです。

――コンペの授賞式に先駆けて、5日、黒澤明賞の授賞式も行われます。少し選考基準が変わってきているのかなと感じました。

 安藤:「世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人」に贈る賞なのですが、おっしゃるように山田洋次監督など選考委員は後者を選ぶ傾向になっています。今年も若手の三宅唱監督とフー・ティエンユー監督への贈賞となりました。未来に向けて特別な賞に仕立てていきたいと思います。

 そのためにも黒澤明賞の授賞式は、クロージングの授賞式とは別に会場をセッティングして行っています。そこには黒澤さんに対する敬意と、日本を代表する黒澤明という巨匠を語り継ぐという意味もあります。海外の映画人が来日する機会に、その名を知らしめていく必要があると。去年、「小津安二郎生誕120年記念企画 “SHOULDERS OF GIANTS”」や「連続ドラマW OZU 小津安二郎が描いた物語」など、小津安二郎特集を行ったのも同様な意図からです。小津監督の足跡を追ったドキュメンタリー「東京画」の監督ヴィム・ヴェンダースが、オープニング作品「PERFECT DAYS」をもって参加してくれたのもフィットしました。

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