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人間が仮想世界に没入する理由は――サバイバルゲームに潜入し全編撮影したドキュメント「ニッツ・アイランド 非人間のレポート」監督インタビュー

映画.com / 2024年11月30日 8時0分

ギレム:しばらくして、あらゆるものがごちゃ混ぜになりました。コロナ禍等の影響で、我々は3カ月間監禁されていたからです。これは不思議な体験でした。現実の世界で食事をしては、ゲームの世界に戻って撮影し、そしてゲームの中でも食料を摂り続けなければなりませんでした。

エキエム:二重生活のような感じでしたね。これまで経験したことのない奇妙で特別な経験でした。現実の世界で自分自身を維持し、同時にバーチャルなキャラクターを維持しなければならなかったのです。あとになって、〈GTA〉で過ごした時間は、僕たちの人生の一部であると気づきました。〈GTA〉に長時間を費やす多くのプレイヤーに共通の思いだと思います。「この場所には自分の人生の一部がある」と。

───カメラマンとしての経験はどうでしたか?

カンタン:登場するアバターたちが殆ど表情のない人形のようなものだったため、撮影は複雑でした。生命感が希薄なもの、あるいは音で生命感を演出しているものをいかに撮影するかが課題でした。また、このゲームに特有の、「他者との奇妙な距離感」という問題もありました。実生活では、よく知らない相手とは距離を置くものですが、ゲームでもそれを尊重する必要があります。例えば、クローズアップを撮りたくて誰かにすごく接近しなければならない場合でも、焦点距離が1つしかないので、いつでもそう接近できるわけではありません。冒険の中で、徐々に相手との距離が縮まるにつれて、物理的にも相手に近づくことができるようになりました。映画に牧師のようなキャラクターが登場します。終盤、私は彼のアバターに完全に密着することができましたが、彼の側には何の不安も見られませんでした。

───映画の冒頭はほとんどロールプレイですが、クルーがゲームの中で過ごす時間が長くなり、プレイヤーたちをよく知るようになるにつれ、〈現実世界〉について話すことが多くなっていきます。これは演出や編集でそうなったのでしょうか、それともクルーが実際に経験したことでしょうか?

エキエム:実際に起きたことですし、プレイヤーたち自身の経験の記録でもあります。第一に、プレイヤーは、対プレイヤーとの関係である役を演じています。少しずつその役が崩れ去り、もう少し親密な空間が生まれることでプレイヤーは“二重人格”になります。アバターでありながら、その背後に「本人」がいるという。プレイヤーはゲームの中で時間が経つにつれ、次第に心を開き役割ではない「本当の自分」で関係を持つ準備ができたと感じるようになります。僕たちは出会ったプレイヤーたちのために、顔、そして人生を創りました。彼らからいくつかの要素や個性の断片をもらい、頭の中でポートレートを再構成したのです。また、しばらくプレイすると、会話がなくてもアバターの服装や動き、態度だけでお互いを認識できるようになるのも面白い経験でした。このようなことが、より“リアルな絆”を生むのだと思います。これは映画というメディアについても言えることですよね。つまり、劇や演技から始まって、観客は次第に演者の背後にいる人間に出会っていくという。

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