長塚京三がフランス文学を愛する“枯れない”独居老人に 原作・筒井康隆が絶賛、吉田大八監督と語る12年ぶりの映画主演作「敵」
映画.com / 2025年1月18日 11時0分
筒井康隆氏が1998年に発表した同名小説を、長塚京三主演、「桐島、部活やめるってよ」「騙し絵の牙」の吉田大八監督が映画化した「敵」が公開となった。時代を現代に移し、平穏に暮らす独居老人の主人公の前に、ある日謎の「敵」が現れる事態を描く物語だ。キャリア50年を迎え、本作が12年ぶりの映画主演作となった長塚と吉田監督に話を聞いた。(取材・文・撮影/編集部)
長塚が演じる主人公の渡辺儀助は、フランス近代演劇史を専門とする77歳の元大学教授。妻に先立たれ、残された預貯金を計画的に使いながら、いつか来る最期を見据え、規律正しく自活している。しかし、独居老人といっても、いわゆる日本の好々爺像とは異なり、愛の国フランスの文学よろしく、肉体は老いても“枯れない”女性(たち)への想いも赤裸々に語られる。
全編を通し長塚のインテリジェンスとダンディズムが滲み、吉田監督のウィットに富んだ演出、美しいモノクローム映像で、原作の持ち味を損なうことなく、老いと死のはざまを生きる儀助の自意識をシュールに描き出す。そして、「敵」とは――。
※本記事には映画のネタバレとなる記述があります。
――原作の筒井康隆氏は本作を「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と絶賛しています。同じくSF的な味わいを持つ文学作品を、吉田監督ならではの脚色で映画化した三島由紀夫原作の「美しい星」(17)も記憶に新しいですが、映像化不可能と言われるような原作とどのように向き合うのでしょうか?
吉田:「美しい星」も今回の「敵」も自分が好きな原作なので苦労は感じないんです。たとえ苦労があったとしても好きだったら乗り越えられるというのは、脚色をしてきての実感です。「どうやって映画にするの?」なんて言われるようなものを、敢えて選んでいるわけではありませんが、難しいと言われれば言われるほど、何とかうまくやって褒められたいという気持ちも強くなります(笑)。
探っていると、自分なりにこのポイントで書けそうだ、という入り口が見つかる瞬間があるんです。「敵」の脚本も、初稿は2週間くらいで書き上げました。若い頃から愛読者だった自分にとって、筒井先生の小説は自分の血肉のようなものなので、あまり苦労は感じなかったですね。
――今作「敵」を映像化できるな、と思われたポイントは具体的にどのような部分だったのでしょうか?
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