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地方発の一大文化施設を目指すセレクトショップ「GEA」【山形ニット紀行Vol.3--佐藤繊維 後編】

FASHION HEADLINE / 2015年11月10日 22時0分

GEA#1外観

佐藤繊維は今年4月、旧工場をリノベーションして、セレクトショップ「GEA(ギア)」をオープンした。2軒が連なるように並んでおり、1軒はレディースとメンズの洋服、小物を取り扱う「GEA#1」、もう1軒は世界中からセレクトしたライフスタイルグッズ、隣接した天童市を拠点とする家具メーカー、天童木工とコラボレーションした家具、山形の作家の食器、バッハがセレクトした山形にまつわる書籍の他、カフェスペースを併設する「GEA#2(ギアツー)」。都心でもなかなかお目にかかれない洗練された空間と商品構成であり、その登場は東京のファッション業界でもいささか驚きを持って迎えられた。

リックオウエンス、メゾン マルジェラ、カラー、08サーカス、そしてオリジナルのエムアンドキョウコが並ぶ品揃えは、言うならば“特濃”である。“濃い”とは商品がコアな洋服好き向けの意味合いで使われる業界語だが、ここにはマーケットイン型の売れているものをなぞった商品は存在しない。デザイナーの思いが詰まったプロダクトアウト型の商品しかこの空間には相応しくないのだ。

旧工場は、60数年前に先々代が、当時でも年期の入った石造りの酒蔵を買い取って移築したもので、何とも言えない独特の味わいがある建物である。なかに入ると、白の城壁のように大小の長方形の石が積み重なった壁と、天井の木の梁にまず圧倒される。GEAの1階には、長年使われて役目を終えた紡績機が中央にどんと鎮座していて、その上にガラスのテーブルが置かれ、平置きの商品のディスプレイになっている。これまた味のある什器は、パリやNYで長年買い集めてきたものだ。2階には、ガラス張りのミニマルな空間があって、そこはメゾン マルジェラのショップインショップになっている。なんでも同社のスタッフが「日本で一番マルジェラを美しく見せる空間」と感動して帰っていったという。

GEAを作った理由について、佐藤正樹社長はこう話す。「地方はずっと東京を追い掛けてきたけれど、それだと一生東京に追いつけない。地方には、ここ山形にも面白い文化がたくさんあるのに、残念なことに地元の人が一番そのことに気づいていない。そんな地方の人の意識を変えるような、文化施設をずっと作りたかった……」。もちろん課題もある。当初予定よりも早く月間予算に近づきつつあるものの、客層は県外からが中心で、地元の人はおっかなびっくり見に来る程度。地元に根付いてきている、とは言い難い状況にある。

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