自己破産する場合の注意点とは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月13日 14時0分
コロナ禍の今、将来に対する不安が尽きないという方も少なくないでしょう。現在借金がある方は、コロナ禍が収束し収入が元に戻れば、借金の返済のめどが立つかもしれません。 しかし、コロナ禍の収束を見通すことができない状況が続き、膨らむ借金に不安を抱いていらっしゃる方の中には、自己破産を選択肢に入れている方もいるかもしれません。 本稿では自己破産に対する留意点を述べてみます。
自己破産の申し立ての手続きに掛かる費用
自己破産の申し立ては債務者の住所地を管轄する地方裁判所で行います。裁判所には申立手数料(免責の申し立てを併せて行う場合)1500 円の他に、裁判所が定める額の手続き費用や郵便切手を納めます。
裁判所への申し立てに必要な書類の作成が難しいケースもありますので、そういう場合は弁護士に依頼することになるでしょう。その際には、弁護士費用が掛かります。自己破産を申し立てた人に債権者への分配の対象となる資産がある場合は、管財事件になります。
管財事件になると、申し立て手続きを依頼した弁護士とは別に、裁判所が選任した弁護士も加わります。裁判所が選任した弁護士を管財人といいます。ご自身で依頼した弁護士がいる場合には「管財人」に払う弁護士費用とともにそれぞれ必要になります。
この場合管財事件に該当しない方に比べると、管財人が付く方は、弁護士費用が二重に必要となるイメージです。
自己破産の手続き後、復権を得るまでの制限
自己破産の手続きが始まってから復権を得るまでの期間、制限を受ける場合があります。では、復権とはどのような時でしょうか?(破産法255条1項)
■免責許可の決定が確定した時
■破産手続きが同時廃止決定で確定した時(債権者に配当する財産がなく、自己破産の手続きの開始と同時に、手続きを終了すること)
■再生計画認可の決定が確定した時(免責許可が下りないため、個人再生に移行した時)
■破産手続き開始の決定後に詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年がたった時
以上が、自己破産の手続き後に復権を得る時です。では、復権を得るまでの間に、どのような制限を受けることになるのでしょうか?
■郵便物にも留意が必要
弁護士が破産手続きを受任すると、督促や請求書は来なくなります。
では、郵便物の何に留意する必要があるのでしょうか? 管財事件に該当すると、復権を得るまでの間、郵便物は管財人に転送される点です。なお、転送されるのは信書が原則で、いわゆる荷物は転送されることはありません。
管財人に転送された郵便物は、管財人が封を開け、内容を見ることができます。
■職業の制限も
自己破産の手続きを行うと、職業上の制限も生じます。警備員や保険募集人といった職業に就くことができなくなるほか、弁護士や税理士などの士業資格においても制限の対象となります。
また企業の取締役に就くことが難しかったり、NPO法人の役員になれなかったりもします。ちなみに、親族などに認知症等になってしまう方がいる場合にも、後見人になることはできません。
■住所を離れることに対する制限
引っ越しや長期の旅行等を行う場合には、裁判所の許可が必要となります。
■緊急小口融資の利用ができない
新型コロナウイルス感染症の影響によりはじまった、社会福祉協議会が窓口となる緊急小口融資は、自己破産の手続きを行っていると申し込みができません。
復権を得ても、クレジットカードの利用ができない?
もっとも留意しなくてはならないのは、いわゆるブラックリストです。自己破産および免責の許可が決定した後、銀行等は10年間、貸金業やクレジットカードは5年間、破産者としてその名前とともに個人情報が載ります。
ブラックリストに名前が載っている間は、クレジットカードの申し込み・利用はもちろん、お金を借りることも、住宅ローンを組むこともできません。そして載るのはブラックリストだけではありません。官報にも載ります。
直近30日以内の官報は、インターネット上で閲覧できます。官報を日常的にご覧になる方はあまりいらっしゃらないかもしれませんが、印刷媒体に破産者として名前が載ってしまうのです。載るのは、その日に発行される官報だけですが、印刷物は残ります。
復権を得て、自身が立ち直ったとしても
自己破産と免責を申し立て、裁判所の許可を得れば借金はなくなり、また復権を得ることもできます。しかし、もし、借金に保証人が付いていれば、債権者は保証人に請求することになります。
保証人が自己破産と免責の申し立てを行い、裁判所の許可を得ない限り、今度は保証人が借金の返済を続けることになります。
まとめに代えて
免責の許可を得てから7 年たっていれば、再び自己破産の申し立てを行うことができますので、自己破産を繰り返す方もいらっしゃいます。筆者は「自己破産と免責を2回、許可された」という方にお会いしたことがあります。
しかし、自己破産を繰り返すことは決してお勧めできません。自己破産は借金をなくすための手軽な手段ではありません。さまざまなデメリットがあることを十分に理解し、慎重に検討するべきでしょう。
出典
最高裁判所「自己破産の申し立てをされる方のために」
e-GOV 法令検索「平成十六年法律第七十五号 破産法」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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