年収が上がらないのはなぜ? 近年の日本で給与が下がる理由
ファイナンシャルフィールド / 2021年12月29日 23時30分
国税庁が発表した実態調査によると令和2年度の平均年収は433万円でした。この数字は1990年代と比較すると上がっていないどころか逆に下がっています。どのような要因で年収が下がっているのか、その原因を探っていきます。
終身雇用制の崩壊
日本人の給与が上がらないどころか逆に下る要因として、戦後から昭和の時代までは当たり前だった終身雇用制の崩壊が挙げられます。2019年を境に企業も財界も終身雇用制見直しの方向にかじを切っています。ただ働いているだけで基本給の上昇やベースアップが望めた時代は終わりを告げました。
雇われている従業員の側から年収アップを企業に打診すればいいと考える人もいるかもしれませんが、日本の雇用体系では企業側の独占的な支配が強く、従業員は声を上げにくくなっています。転職を繰り返すたびに賃金が下がることも年収アップを阻害する要因となっています。
基本給が上がらなくても残業手当で収入が多くなるシステムも問題です。2020年4月から中小企業にも適用された働き方改革関連法によって、時間外労働の上限が制限されています。従来よりも残業時間が減らされることで総賃金の上昇も見込めなくなりました。同一労働同一賃金への流れも、非正規社員の時給アップを理由として正規雇用社員の手当削減を加速させています。
ICT化の遅れ
全産業の7割近くをしめると言われている中小企業のICT化の遅れも問題です。ICT導入以前と同じやり方では事務作業にも時間を取られ、低い生産性によって高い付加価値を生み出すことは期待できません。ICT化しないことによって従業員に求められるスキルも低いままで、優秀な人材が育たない環境となっています。
企業側による1人の優秀な社員よりも同じ作業をできる平均的な従業員を望んでいる体質も問題です。企業内部に人を育てられるだけのノウハウが無い状況も従業員が平凡な社員から脱却できない理由となっています。
変化しないビジネスモデル
高度経済成長時代の日本企業が得意としてきたビジネスモデルは、安価な製品を大量生産することです。他国にライバルがいない時代にはこのシステムでも業績は伸び、賃上げも可能でした。今の時代はアジアやアフリカ地域を中心に、日本よりも安い賃金で生産する国が増えてきましたので、日本の高い賃金体系では太刀打ちできなくなっています。
安い品物を大量に売るビジネスから、製品に対して付加価値やサービスをプラスするビジネスモデルに変革する必要がありましたが、そのチャンスを逃してきました。これは従業員の問題ではなく雇用側の姿勢ですから、根深い問題だと言えます。
価格添加を嫌がる体質
日本の企業は商品の値上げに慎重です。今の値段が適正ではないとしても、値上げすることで総売上数が下がることを恐れ、薄利多売を推し進める旧態依然とした体質から脱却できていません。適正価格で販売しなければ利益も上がらず、賃上げもままならなくなります。
大手企業は値上げをしない代わりに別の方法で利益を確保しようとやっ気になっています。それは系列や下請けには厳しく値下げ要求をすることで、元請けの大手企業はそれによって内部留保を増やしています。賃上げを抑制することで従業員の雇用を守っていると言う経営者もいます。雇用を守ることも大切ですが、従業員の生活を守ることも経営側の大切な仕事です。
出典
令和2年賃金構造基本統計調査結果の概況
結果に対して高い賃金を
働いた時間ではなく仕事の結果に対して賃金を支払う雇用形態を、成果主義やジョブ型と呼びますが、日本の企業にはこの考え方が浸透していません。上に立つものが従業員の人間性や能力を正しく判断できないことが理由の1つとして考えられます。日本特有の文化や慣習で業績が上がり、賃金も上がる時代は終わりを告げました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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