資産形成と住宅取得の両方を実現する「賃貸併用住宅」って?

ファイナンシャルフィールド / 2019年8月27日 22時30分

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人生100年時代といわれるようになり、「長生きすることに不安に感じる」という方もいらっしゃいます。将来に向けた資産形成は早めに着手するほど効果的です。資産形成・運用にはさまざまな方法があり、どのような方法を選択するかは人によって異なります。   資産形成と自らの住宅取得の両方を実現する方法として「賃貸併用住宅」、すなわち自宅と同じ建物に賃貸部分を併設する手法が注目されています。「賃貸併用住宅」にはどのようなメリットとデメリットがあるか考えてみます。  

賃貸併用住宅のメリット

まずはメリットを見てみます。
 
・一定の条件のもと住宅ローンが使える
多くの金融機関が住宅ローンの適用条件として「建物の50%を超える部分が自己の居住用であること」を条件にしています。逆にとらえれば、半分までは自分が住むためのものでなくても良いということになります。賃貸部分は「事業用」の扱いです。
 
賃貸住宅として他人に賃貸する場合のほか、購入者自身が店舗や事務所として利用する場合もこの条件が適用されます。
 
・賃料収入からローン返済できる
通常、住宅ローンは購入者の自己資金や給与などの所得から返済します。賃貸併用住宅の場合、ローン返済額の一部あるいは全額に家賃収入を充当することが可能です。
 
・家族構成の変化に対応できる場合も
当初は賃貸併用住宅として建築し、将来は賃貸部分に子の世帯が住む二世帯住宅とすることも可能です。ただし、子どもが住むからと入居者に退去を求めるのは難しいですし、その立地がファミリー向けの賃貸住宅には不向きなこともあり得ます。
 
親が「子の世帯に住んでほしい」と考えていても子の世帯が同じように考えるとは限りません。慎重に検討する必要はあるでしょう。
 
・相続税対策として活用できる
相続税評価上、不動産は実勢価格よりも低い固定資産税評価額あるいは相続税路線価を元に評価されます。さらに、賃貸住宅の場合、その土地建物は入居者の「賃借権」が付くことになり、所有者は自由に利用できません。
 
そのため、土地建物ともに「制約のある土地」として自用(自己が利用するためのもの)に比べ相続税評価額が下がります。
 

建物の相続税評価

自用の建物の相続税評価額は「固定資産税評価額」が適用されます。賃貸併用住宅では、建物は「借家権付建物」となり、「借家権」の分だけ評価額が下がります。現在の税制では借家権は一律30%に設定されています。これにより、建物については下記の計算結果が適用されることになります。
 
賃貸併用住宅の相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権30%)
 

土地の相続税評価額

賃貸建物が建つ土地は「貸家建付地」として評価されます。土地の場合、国税庁が路線価(相続税路線価)とともに「借地権割合」を公表しており、インターネットでも確認できます(※1)。土地の相続税評価額は下記の計算により求めます。
 
貸家建付地の相続税評価額
=自用地の相続税評価額-(1×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

 
賃貸併用住宅の場合、土地、建物ともに、全体の面積を自用部分と賃貸部分の割合で分け、それぞれ計算した結果が評価額です。
 
また、土地について相続時に「小規模宅地等の特例」の適用条件を満たせば、自用部分は80%、賃貸部分は50%の減額が受けられ、さらに大きく評価が下がります(小規模宅地等の特例については別の機会にお伝えしたいと思いますが、条件が細かく定められているので注意が必要です)。
 
・自主管理が容易
自らが居住している建物の一部を賃貸することになり、自宅周辺の清掃などを自分で行うこともできるでしょう。建物管理を外部に委託するコストを削減できることから、より収益力を高めることも可能です。
 

賃貸併用住宅のデメリット

デメリットにはどんなものがあるでしょうか?
 
・建築費が高額になる
自宅だけの建物に比べ規模が大きくなるほか、賃貸部分にも水まわりの設備(キッチン、トイレ、浴室)などを別途設けることになりますので、建築費は高くなりがちです。また事業収支上、経年劣化によって設備の更新などが必要になることも考慮しておく必要があります。
 
・空室のリスク
賃貸である以上、入居者が埋まらない、あるいは入れ替わるリスクも考慮しておく必要があります。入居者がいない時期の賃料収入は得られませんが、ローンの支払いは毎月発生します。周辺マーケットなどの立地特性なども十分に考慮し、ある程度の空室率も見込んだ計画が必要です。
 
・オーナーと入居者、入居者同士のトラブル、プライバシーへの影響
文字通り「一つ屋根の下」に他人が住むことに抵抗を感じる人は少なくありません。相続を考えると、土地建物を引き継ぐ人も同じ建物に他人が住むことを許容できることが条件です。
 
また、入居者同士で騒音や振動などの苦情が出ることもあり得ますし、家賃の滞納が発生することも考えられます。
 
同じ建物に他人が住めば、出入りの時に顔を合わせることもあるでしょう。賃貸専用の投資用物件であれば、建物管理や入居者管理をすべて業者に委託し、大家と入居者が直接接しないようにすることも可能ですが、賃貸併用住宅の場合そうはいきません。
 
大家として、入居者と円滑なコミュニケーションが取れるかが重要です。そうしたことに煩わしさを感じる人には賃貸併用住宅は不向きです。
 
・売却時の制約
何らかの事情で土地建物を売却しようと考えた場合、賃貸併用住宅の場合にはさまざまな制約があります。入居者がいる場合、売却を理由に立ち退きを求めることは一般的には難しいといえます。結果として、入居者がいる状態で売却を行うことになる可能性があります。
 
また、賃貸併用住宅が欲しいと考える購入者はそう多くはありません。結果的に売却に時間がかかったり、価格を下げて買い手を探したりすることになる可能性もあります。
 

まとめ

賃貸併用住宅には多くのメリットがあることは確かです。マイホーム取得は人生最大の買い物といわれますが、賃貸併用住宅では、マイホーム取得に賃貸アパート経営を付加することでさらに高額な支出になります。
 
計画通りに回れば大きなメリットを享受できますが、流動性の低い「不動産」に関することでもあり、うまくいかなかった場合にリカバリーが難しいともいえます。
 
賃貸併用住宅を検討する場合、立地環境、マーケット調査などを行うとともに、将来のことを見据え、ある程度のリスクがあることも織り込んで計画する必要があります。
 
出典
(※1)財産評価基準書路線価図・評価倍率表
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

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