水災から住まいをどう守る?保険の補償範囲や保険料を知っておこう
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月19日 23時10分
令和になっても、地球温暖化現象は止まらず、真夏の最高気温の上昇、台風の大型化、それに伴う大雨やゲリラ豪雨など、自然がもたらす災害は増えています。 気象庁や自治体からの警報も回を重ねるごとに「これまでに経験したことのない○○」など、語調を強めています。台風15号や19号では、実際これまでには起こったことのない突風や河川の氾濫などで多くの住宅が被害を受けました。 持ち家をもとどおりにするには時間やお金もかかり、精神的にもつらいことです。せめてお金の心配だけでも軽減できるように、うまく保険を利用できないものでしょうか?
住宅の被害には火災保険を使う
住宅の火災はもちろん、それ以外に台風などによる風災、豪雨・高潮・土砂崩れなどの水災も火災保険がカバーします。内閣府の資料によると、2013年3月現在、火災保険は共済も含めておよそ85%の世帯が加入しています。
建物の再調達価額を「2000万円」で契約した火災保険では、例えば竜巻により全壊した場合には2000万円が支払われます。全壊でない場合には損害額分(800万円の損害であれば800万円)が支払われますので、火災保険を活用した住宅再建が可能な場合もあります。
ただし、住宅ローンを組んでいて、再調達価格より住宅ローン残高が高額だと、火災保険を元手に再建した住宅を売ってもローンが返しきれないことになります。何らかの経済的事情で途中売却しなければならない場合は、注意が必要です。
水災の補償の範囲とは?
水災の補償の範囲は、一般には台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石等の水による災害が原因で、建物や家財が所定の損害を受けた場合です。
建物の範囲は、自宅建物のほか、
・門、塀、垣、物置、車庫その他の付属建物
・畳、建具その他の従物、電気、ガス、冷暖房設備その他の付属設備など
家財の範囲は、家具・家電など、保険証券に記載の建物内収容のものです。
水災の加入方法は、保険会社や共済により異なり、
1.火災補償のみの主契約に水災などそれ以外の補償をオプションで追加するもの
2.すでに水災などの補償もパッケージになっているもの
があります。
内閣府が2016年1月に実施した「水害に対する備えに関する世論調査」によると、自宅建物もしくは家財への水災補償付の火災保険や共済に加入していると回答した者は、全体の3割にとどまっています。
火災保険の保険料は?
火災保険の保険料は、住んでいる地域・建物の構造・築年数・広さなどにより異なります。台風などの進路により風災や水災の起こりやすい地域は、保険料が割高になりやすい傾向があります。
ただ、今後も地球温暖化が続くと、過去のデータに頼ってばかりもいられない可能性があります。保険に加入する私たちは、これまで必要ないと考えて切り捨てていたようなリスクについても検討が必要になるかもしれません。
保険料は安いに越したことはありませんが、必要な補償まで削ってしまうと本来の保険の目的が発揮されない可能性があります。
例えば、下記の事例を見てみましょう。
東京都内で100平方メートルの木造一戸建て(築10年)の建物(保険金額:1900万円)および家具などの家財(保険金額:1000万円)に5年間保険をかけると、
ある保険会社の1年間の保険料は4万4000円程度です。
建物・家財の水災補償をはずすと、保険料は約1万7000円程度下がり、2万7000円です。1万7000円が5年間になると、8万5000円になりますので、差額としては少なくありません。ですが、この年間1万7000円が、本当に切り捨ててよい値段かどうか、その価値を見極めなければなりません。
地方自治体や国土交通省のハザードマップで確認し、居住エリアの水災の可能性をしっかりと理解し、もし危険地域に入るようでしたら水災補償は付けておくと安心です。
地球温暖化・異常気象は今後も続く!
内閣府資料(2016年3月)によれば、「将来、温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオをとったとしても、世界の平均気温は上昇し、気候変動の影響のリスクが高くなると予測」とあります。
そのため、将来はさらなる気温上昇、大雨の頻度と降水量・台風の最大強度の増加、海面の上昇等が起こることが明らかです。
保険は大きなリスクに備えるためのものです。そのため、これまで以上に自然災害の対策費用としての保険料は不可欠な出費になるかもしれません。
水災以外の補償も火災保険の特約で付けることもできます。台風19号で都市部では、多摩川が決壊する前にマンホールから水があふれて道路が冠水する「内水氾濫」が起こりました。
マンションの住民でも、風呂場やトイレから水が逆流することも考えられます。これには「水ぬれ」補償で対応できます。また高い所は風が強く、飛来物による損壊などもあるかもしれません。これには「外部からの衝突」の補償で備えられます。
必要以上に保険をかけることはありませんが、これまでの想定が通用しないリスクを認識し、今後この傾向はさらに強くなることを心に留めておくと、いざというときに役に立つでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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