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医療費の高騰に健康保険は耐えられるか!?

ファイナンシャルフィールド / 2020年2月1日 9時0分

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国民の医療費は年々増加を続けていて、健康保険制度や国の財政を圧迫しているのはよく知られるところです。   診療報酬改定や政府予算のニュースで報道されていますので、みなさんも目にしていることでしょう。多くの人は「高齢者が増えているので、医療費が増加している」と思っているかもしれません。確かにそれも理由の1つです。しかし、別な理由もあるのです。  

医療の高度化が医療費増加の要因

医療費の増加は、高齢者の増加だけが理由ではなく、別な理由も大きいと厚生労働省は見ています。それは「医療の高度化」です。
 
近年、日進月歩で医療技術が進歩しており、それとともに検査にかかる費用、治療にかかる費用、薬剤費が上昇しています。具体的にどの程度、医療費を増やしているのかは明確に算出できませんが、高齢者の増加によって保険料を圧迫するインパクトと同じかそれ以上の影響をおよぼしていると考えられています。
 
特にがんの治療においては、治療法や治療期間にもよりますが、治療費が高額となるものがあります。
 
薬物療法の1つである分子標的薬は薬品によっても異なりますが、半年間の投与で200万円ほどかかるものがあります。放射線治療の陽子線・重粒子線治療では160~240万円程度です。さらに、免疫療法だと1000万円以上かかるものもあります。
 
ただ、実際の患者負担はそれほど大きくかかりません。健康保険、共済組合や国民健康保険であれば自己負担は3割で、その負担も一定額以上になると「高額療養費」が給付されるからです。その人の所得や医療費にもよりますが、おおむね月額10万円程度で済みます。
 
およそ3000万円もかかる治療もありますが、例えば標準報酬月額が28~50万円の人がこの治療を受ける場合、自己負担は40万円程度で済みます。
 
その差額は健康保険や国民健康保険などの公的医療保険、あるいは後期高齢者医療制度で賄われます。それでも病気で働けない身にとっては決して負担は小さくありませんが、もともとの医療費に比べると、患者の自己負担はかなり少なく済みます。
 
このような高額な治療の多くは近年開発されたものですが、当初は「高度先進医療」といって、これらの治療法にかかる費用だけは全額自己負担となっていました。がんの陽子線・重粒子線治療にかかる約300万円は全額が自己負担です。
 
それがここ数年で相次ぎ保険適用となり、患者の負担が軽くなりました。2016年に小児がん、2019年には前立腺がんなどに適用されています。治療の実績が増え、その効果と安全性が確認されると公的医療保険の対象となります。
 
すると自己負担は3割で、さらに一定額を超えた分には高額療養費が給付されます。今後も実績が増えていけば、適用対象が順次増えていくことでしょう。分子標的薬や免疫療法などでも保険適用が広がっており、患者の負担はかなり抑えられています。
 

健康保険で利用できる治療費に上限を設ける

患者が負担した費用以外は、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合、あるいは国民健康保険の運営主体である自治体が負担しています。後期高齢者医療制度の対象である75歳以上の人の分については、健康保険なども負担しています。
 
このように、高齢化にプラスして医療の高度化で医療費が増加しており、健康保険を運営する健康保険組合の財政状況はかなりひっ迫しています。3000万円かかる治療が行われた場合、健康保険組合はその9割以上の金額を負担することになります。
 
さらに、国民健康保険や後期高齢者医療制度もかなりの額を負担しており、保険料の引き上げが続いています。中小企業の社員を中心とした全国健康保険協会(協会けんぽ)も厳しい財政状況ですし、国民健康保険は自治体の財政で補われています。
 
誰もが好き好んで病気になるわけではありません。重篤な病気になった場合に大きな負担なく医療が受けられるのは大切なことです。
 
しかし誰でも想像がつくように、保険組合の支出を抑えるか、収入を増やすかをしなければ、いずれ保険制度を維持できなくなります。諸外国の例を見ると、国によってまちまちですが、公費の負担に上限を設けているところもあります。
 
現在、原則1割となっている75歳以上の自己負担割合を、2割に引き上げることを厚生労働省が検討しているとの報道がありました。この部分もやむを得ないところですが、高額な医療費についての保険支出も再検討する必要があるでしょう。
 
高額な治療費を保険の対象から除外すると、国民の経済的な格差が治療にも影響してしまいますので、見解が分かれるところですが、保険制度の維持するためにも議論は必要です。
 
執筆者:村井英一
国際公認投資アナリスト

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