定年後も継続雇用で働き続けるなら、知っておきたい継続雇用制度内容と注意点
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月27日 8時30分
高年齢者雇用安定法が改正され、企業は来年4月から、70歳までの就業機会を確保することが努力義務となります。年金の受給開始年齢の選択の幅も75歳までに広がるなど、高年齢層を取り巻く就業の舞台は70歳代に突入しました。 ところが、現実に目を転じると、多くの企業の定年は60歳のままです。果たして60歳から年金受給開始までの期間、生活は大丈夫なのでしょうか?実態を正しく認識して準備を始めましょう。
継続雇用制度とは? 最新の法改正と2つの形態
高年齢者雇用安定法の、現在と改正後の比較は次の図のとおりです。
高年齢者の就業確保のための措置は、このように何種類かあり、企業はそのいずれかを選択することになります。現行制度では2の継続雇用制度の選択が非常に多く、全国約15万7000社に対する厚生労働省の調査によると、全体の79.3%を占めます。(※1)
ところで、この継続雇用制度は「勤務延長制度」と「再雇用制度」の2つに分類されますが、圧倒的に多いのが「再雇用制度」です。
勤務延長制度は文字通り、定年後も同じ条件で雇用継続し、退職金も延長終了時に支給されます。一方、再雇用制度はいったん定年到達時に退職し、退職金を支給されたあとに雇用形態を変更して雇用(嘱託、契約社員、パート等)されることが一般的です。
つまり、再雇用制度は業務内容や仕事のレベル・責任を変更し、新たな雇用契約を締結するので、定年前と異なる賃金体系・水準で雇用することが可能になります。
では、実際に定年前と比較してどの程度の水準の報酬が支払われているのでしょうか。
継続雇用制度における賃金水準
少し以前のデータですが、東京都の実態調査から継続雇用者の賃金水準を見てみましょう。定年時を10割とした場合の比率は「5~6割未満」(23.3%)が最も多く、以下「6〜7割未満」(22.6%)、「7~8割未満」(15.3%)と続きます。
企業規模別に見ると「1000人以上」では「5割未満」(18.2%)、「5~6割未満」(33.3%)が他の規模の会社に比べ多く、大企業のほうが再雇用時の賃金ダウンが大きいことがわかります。(※2)
賃金水準が中小規模の企業より高いと考えられるため、再雇用時の賃金に企業規模で大きな差があるとは必ずしもいえませんが、問題はこの落差です。それまでの生活水準を維持しようとするとかなり無理が生じます。
上記は平均的な数字であり、会社によって相当幅があります。また、定年を迎える頃の各世帯の状況は千差万別です。
住宅ローンや教育費の有無、親の介護費用、退職金額の多寡、金融資産の有無・・・先輩や周囲もみんな延長雇用したから、と自分のケースを吟味せず、準備もなく延長してしまうと、「こんなはずじゃなかった」と慌てるリスクがあります。
事前に想定できていれば、配偶者がパートに出るなり、資産を計画的に取り崩すなりと、生活レベルを抑える(事前に試してみることを推奨)工夫と合わせてやりくりする心積もりができます。
ライフプランの死角にしない
老後までしっかり資金計画を立てているつもりでも、定年から年金受給までは「会社の継続雇用制度があるから」と実際の賃金水準を理解しないまま安心して、検討をスルーしていませんか?
しかも、50歳代後半に「役職定年」を設けている会社だと、まずその時点で賃金が下がることが多く、そこからさらに5~6割未満になると、ほんの数年間で収入が激減することになります。
このように、年金受給までの収入は、勤め先の高年齢者雇用方針に大きく左右されますので、自社の制度をよく確認することが大切です。
他にも、準備すべきことがあります。それは心の準備です。
例えば管理職だった人が再雇用制度を使う場合、権限のない事務的な仕事になり、役職もなくなるかもしれません。新たな役割を受け入れ、周囲と上手になじみながら働きたいものです。
老後まで見据えた資金計画を立てる際、定年後の当面の収入水準を冷静に理解しておくことが、継続雇用制度との賢明な付き合い方といえるでしょう。
《出典》
※1 厚生労働省「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」
※2 東京都産業労働局「「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」平成25年3月」
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー
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