2019年度生命保険42社の資産運用や保険金等の支出はいくら?
ファイナンシャルフィールド / 2020年9月11日 10時30分
生命保険会社は加入者から保険料を集めていますが、保険金や給付金等でどのくらい払っているのでしょうか? 2019年度の決算資料から、生命保険会社の支出である資産運用費用と保険金等支払金の額について全42社を調べてみました。
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生命保険会社全42社の資産運用費用は4.1兆円
下記の表では、2019年度の各生命保険会社の決算(案)資料から資産運用費用を確認し、多い順に並べています。資産運用費用とは支払利息や有価証券評価損、金融派生商品費用等の合計額で、損益計算書に保険金等支払金や責任準備金等繰入額等とともに経常費用として載っています。
2019年度は新たに、はなさく生命が開業し、他に3社の社名変更があり、アリアンツ生命がイオン・アリアンツ生命へ、ソニーライフエイゴン生命がソニーライフ・ウィズ生命へ、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命がSOMPOひまわり生命へ変わっています。
2019年度に資産運用費用が最も多い生命保険会社は、日本生命で5088億円となっています。株式等評価損や金融派生商品費用等が大きいですが、有価証券利息・配当金等で費用の3倍以上の資産運用収益を計上しているので、心配は無用です。
2番目に多い第一フロンティア生命(4869億円)は資産運用費用が収益を上回っています。これは為替差損を3969億円計上しているからで、外貨建て保険の取り扱いが多いと為替差損や差益が発生しやすくなります。3番目のメットライフ生命や、4番目の三井住友海上プライマリー生命も同様と考えられます。
資産運用費用は12社が1000億円を超えている一方で、14社が100億円未満となっており、同じ業界でも規模にかなり差があります。ちなみに全社の資産運用費用を単純に合計すると4兆1187億円で、資産運用収益(9兆0789億円)の半分以下です。
生命保険会社42社が保険金等で支払っている額は29兆5000億円
次に同じく2019年度の各生命保険会社の決算(案)資料から、保険金等支払金を確認し、表にまとめてみました。保険金等支払金とは、保険金や給付金、年金、解約返戻金等、生命保険会社から加入者へ支払っているお金のことです。保険会社は支払事由が発生したら、契約時に約束した保険金や給付金等を払います。
保険金等支払金が最も多いのは、かんぽ生命で、6兆1914億円になります。前年より1割程減っていますが、保険料等収入よりも多くの支払いとなっています。2番目は日本生命(3兆6294億円)、3番目は第一生命(2兆3975億円)となっています。7社で1兆円を超えており、29社で1000億円を超えています。
はなさく生命は2019年度に開業したばかりですが、早くも保険料等支払金が1億9200万円発生しています。気になったので確認してみると、そのうち1億1300万円が給付金の支払いでした。
給付金は病気やケガで入院した時の入院給付金や、特定疾病になって受け取る一時金等のことです。新契約6万3682件のうち何件で給付金請求があったかはわかりませんが、加入してから1年以内に給付金を受け取る人が一定数いることがわかります。
保険金等支払金を全42社単純合計すると29兆5478億円になります。この大部分は保険会社から加入者へ払われたことを意味します(再保険料等を除く)。
保険金等支払金が前年に比べて増えている保険会社は27社、減っている保険会社は14社となっています。また、保険金等支払金が保険料等収入を上回っている保険会社が9社あります。
2019年度に生命保険業界は、超低金利によって運用系保険商品の魅力が減り、法人保険の税制変更によって法人保険の魅力が減り、新型コロナウイルス感染症の影響で保険募集がしづらくなる等、逆風ばかりの1年でした。消費増税も加入者の保険料支払いに少しは影響しているはずです。
2020年度も新型コロナウイルス感染症の影響が続いていることから、生命保険業界にとって引き続き厳しい1年になりそうです。ただ加入者の多くは生命保険会社以上に厳しいはずです。
加入している生命保険契約をやめるのは簡単ですが、病気やケガをしてしまったら、かえって生活が厳しくなります。続けるかやめるかだけでなく、減額するとか、内容を見直す等の手段もあります。厳しい時代を頑張って乗り越えていきましょう。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者
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