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「遺産の半分は孫に」遺留分が納得できず父の遺言書を燃やしてしまった姉への“天罰”とは?

Finasee / 2024年4月4日 11時0分

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Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

明理(45歳)は父の登司(82歳)が倒れたことをきっかけに、娘の麻央(16歳)を連れて実家に戻り、父の介護をしながら3人で暮らすことに決めた。登司はがんに侵されていて余命わずかだった。姉の由佳理(51歳)に連絡をすると、父と不仲だったこともあり渋っていたが、夫を連れてやってきた。

「お父さんって遺産結構あるのよね? この家も売れば良い値段するんでしょ?」

と、デリカシーのない質問をする由佳理。その話を聞いていた登司は、遺産のことはしっかり話しておかなければいけないだろうと、作成してあった遺言書を読む。それは、孫娘の麻央が半分、残りの半分を由佳理と明理の姉妹2人に均等に相続させるという驚きの内容だった……。

●前編:「遺産結構あるのよね?」余命わずかな父の遺産目当てに帰省した姉夫婦。一族を驚かせた“遺言書の内容”とは

 

ろくでもない姉からの提案

遺言を読み終えた登司は、再び自分の部屋に戻った。

麻央も遺言書を棚に戻し、登司に付き添ってリビングを出る。

残されたのは明理と由佳理と哲也の3人。由佳理は眉間に深いしわを作り、頭を抱えていた。

「ねえ、あんた、これでいいの?」

「どういうこと?」

「半分もあんたの娘が持って行くことに関してよ」

「お父さんは麻央の将来のことを考えて、そうしてくれたのよ」

明理は正直な気持ちを語る。しかし由佳理は納得していなかった。

「じゃあ私たちは4分の1しかもらえなくても良いって言うの⁉ こんなの違法じゃないの⁉」

由佳理はヒステリックな声を上げる。そこで明理はすぐに携帯で調べた。

「どうやら、問題ないみたいね……」

「ウソでしょ……?」

「うん、子供は最低限4分の1を相続させればいいみたい。だから今回の配分は問題ないと思うよ。きっとお父さんもそのことを調べた上で、遺言書を書いたんじゃないかしら」

由佳理は肩を震わせる。

「わ、私には必要最低限だけでいいってこと……?」

「でも、それは仕方ないよ」

明理がそう言うと、由佳理が目をひんむく。

「どういう意味よ……?」

「だって姉さんは実家を出てから全然帰ってこなかったでしょ。お母さんが入院したときだってそうだし、葬式だってすぐに帰ったじゃない。そんなことをしておきながら、遺産だけはもらいたいって、そんなの通用しないよ」

「……へ、へえ。あんたが私に意見するなんてね。偉くなったもんじゃない」

「いや、別にそういうわけじゃ……」

「ふん、私も娘を使ってアイツに取り入ってれば良かったわ。そうすれば、あんたみたいに遺産の7割以上を独占できたのにな~」

明理は気付かれないようにため息をついた。

「そんなつもりあるわけないでしょ」

「男に捨てられて、シングルマザーやってるから、お金は要るもんね~。したたかだわ~」

由佳理の嘲笑に頭が熱くなった。しかしここで怒っては向こうの思うつぼだと、怒りを収める。

哲也が由佳理に何かを話しかけ、そこから2人は内緒話をし始めた。

そこから漏れ聞こえる単語は「支払い」だったり、「期限」だったり、ろくでもなさそうなものだった。2人は金に困っている。それだけは明白だ。

「あんたさ、まだこの家にいるつもりなの?」

「うん、しばらく有休取ったし、麻央も夏休みだから」

由佳理は舌打ちをする。

「……まだそうやってこびを売るつもり?」

「どういう意味よ?」

「これからは私がお父さんの世話をするから。あんたらは出て行きなさいよ」

由佳理の提案に驚いた。

「え? 姉さんが?」

「当たり前でしょ。家族なんだから」

由佳理の口から出る家族という単語はあまりにもチープで取って付けたようなものだった。

その日はそれだけを言い残して帰ったものの、翌日から由佳理は本当に登司の身の回りの世話をするようになった。

父の容体が急変

由佳理は介護どころか家事すらまともにできなかった。

それでも無理やりに介入しようとしてくる由佳理は単なる邪魔でしかなかった。そしてついには登司の逆鱗(げきりん)に触れ、部屋から追い出されてしまった。

部屋を出入り禁止にされた由佳理は今度は台所で登司のために料理をしようとしていた。

「姉さん、もう無理よ。あなたが何をやっても父さんが遺産の配分を変えることはないって」

「な、何でよ⁉ こんなにやってるのに⁉」

「姉さんは邪魔してるだけだし、今まで散々、家族に迷惑をかけてきたじゃない。こんなことをしたって帳消しにできないわよ」

由佳理は明理から諭されて、悔しそうにシンクを見つめていた。するとそこに麻央は走ってやってきた。

「ね、ねえ! おじいちゃんが、おじいちゃんが!」

麻央の様子を見てすぐに明理は登司の部屋に駆け込む。登司が苦しそうに身をもだえさせていた。

「お、お父さん⁉ すぐに救急車呼ぶからね!」

明理は登司の体をさすりながら、病院に電話をかける。そしてすぐに麻央を呼ぶ。

「お母さん、おじいちゃんと病院に行ってくる。あなたはお留守番しておいて」

明理の言葉に麻央はうなずく。由佳理を1人でこの家に置いておけないという明理の気持ちをすぐに察したのだ。

姉の仰天行動と父の最期

それから登司は即入院した。ただすぐに痛みは引いたようで、安静にしておけば大丈夫とのことだった。

安堵した明理は着替えを取るために帰宅。するとリビングからヒステリックな声が聞こえてきた。明理は急いでリビングのドアを開けた。

「どうしたの⁉」

リビングでは麻央と由佳理が取っ組み合いのけんかをしていた。なぜか由佳理は麻央の手にあるスマホを取ろうとしているように見えた。

取りあえず明理は2人の間に入り、場を収める。

「何よ⁉ 何があったの⁉」

すると麻央は灰皿を指さす。灰皿の上に黒くこげた何かが置かれている。

「これ、何?」

「遺言書。この人、お母さんが病院に行ってるときにこれを燃やしたんだよ」

そう言って麻央は携帯の画面を見せる。そこには由佳理がライターで封筒を焼いているところの様子が写真として収められていた。

それを見て、由佳理が麻央からスマホを取りあげようとしていた理由が分かった。その瞬間、明理は頭が真っ白になるほどの怒りを覚えた。

「何やってんのよ、あんた!」

「だ、だって、このままだと、遺産が……!」

「父親が苦しんでいるっていうのに、こんなときにもお金の心配していたの⁉ あんた、本当にサイテーね!」

明理のけんまくに由佳理は気おされる。

「あのね、私ね、借金があってね……」

「そんなの知らないわ! さっさとこの家から出て行け!」

「でも、遺産は、遺産は……?」

「そんなの関係ない! どうしてお父さんの気持ちを無碍(むげ)にするようなことをするの⁉ 4分の1を渡そうとしてくれてるだけでもありがたいと思いなさいよ!」

すると、オロオロしながら、由佳理は立ち上がる。

「で、でも……!」

「今すぐにこの家から出て行って!」

明理の言葉に反応して、由佳理は逃げるように家から出て行ってしまった。怒りが収まりきらない明理の背中に麻央がそっと手を添えた。

「……ああ、麻央。大きな声だしてごめんね」

すると麻央は首を横に振り、親指を突き上げた。

「ううん、グッジョブ」

その言い方に明理は思わず笑ってしまった。

「どうするの? このまま許すつもりないよね?」

「当たり前でしょ。すぐにお父さんに相談するから。あの人に1円だって遺産は渡したくないわ」

そうなると、由佳理との衝突は避けられない。それでも明理は逃げる気持ちは一切なかった。

その後、父が遺言の執筆などを相談していた弁護士から、「遺言を勝手に破棄すると相続権を失う」のだと教えてもらった。明理はすぐに手続きを行い、由佳理を相続から排除し、さらに絶縁を言い渡した。

遺産のあてを失った由佳理たちは借金取りに追われるようになったが、明理は彼らの手助けをするつもりは毛頭なかった。

それからしばらくは、家族3人で幸せな毎日を送れた。

そして登司は安心をしたのか、安らかな顔であの世へ旅立っていったのだった。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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