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【長男 VS 3兄弟】父親の“最期の願い”はかなうのか…遺産をめぐる争いの「まさかの結末」

Finasee / 2024年4月5日 11時0分

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Finasee(フィナシー)

<前編からのあらすじ>

町田一家の長男である竜也さんは、歳を重ねるごとに問題を起こし、家族を困らせてきた。成人後は一人暮らしで、実家へもめったに帰らなくなっていた。

父の秀夫さんは「最後まで自分をみとってくれた子たちに財産を残したい」と思い、竜也さんを相続から廃除することを決断。その旨を最後の言葉として残された兄弟に伝えたのちに亡くなった。残された長女の郁美さん、次男の健太郎さん、三男の直次さんは父の意思を尊重し、竜也さんに知らせずに遺産を分配することに。

しかし、数カ月後、竜也さんは遺産分割の事実を知り激怒。「どういうことだ?!」「親から相続財産を受け取るのは子どもの権利だろ!」と自身の権利を主張し、他の兄弟たちと対立することとなった。

●前編:【「これも報いだ」素行の悪い長男に手を焼いてきた家族…父親の死後、兄弟が企てた“仕返しの方法”】

相続人の1人を除いてした遺産分割協議の行方

結論から書こう。今回3人の兄弟たちがした遺産分割は無効だ。

一般的に遺産分割(遺産分割協議といわれる)とは、遺言が存在しない場合に相続人間で集まって遺産の分配割合や方法について話し合って決めるものだ。遺産分割協議は本来、相続人全員が参加し、その合意によって行われる必要がある。だが、今回の遺産分割協議においては相続人全員の合意がない。

そう、竜也さんが参加しておらずその合意もないのだ。竜也さんと3兄弟とは以前からほとんど会ってはいないようだが、それだけで竜也さんを省いていい理由にはならない。

遺産分割協議は単に連絡が取れないから、連絡を取りたくないからといった理由で相続人のうち1人でも省いて行っていいわけではない。

全員がそろってなされていない遺産分割協議は無効となる。仮に相続人の中に行方不明者があったとしても一定の手続きをとったうえで行方不明で連絡が取れないことを明確にしていく必要がある。今回兄弟たちはその手続きをとっていない。つまり、遺産分割協議は無効となるわけだ。

確かに遺産分割協議は私が作成した。だが、そもそもだが今回竜也さんの同意がないことを隠された状態で作成したものであるため遺産分割協議が無効なことに変わりない。

父の意向はどうなる?

そもそもだがこの遺産分割は父・秀夫さんの意向に沿って行われたものだ。生前に「竜也に相続させるな」と言っていた。これはいわば相続人の廃除に当たるものと考えていいだろう。

廃除とは、特定の相続人から相続権を奪う制度だ。廃除されたものは例え実子であったとしても相続人でなくなり財産を相続することはできなくなる。

このように、廃除は非常に強力なものだ。時に相続人の人生を大きく左右することもある。それゆえ、廃除をするには厳格な法的手続きが求められている。それを簡潔に説明すると、家庭裁判所にて所定の書類を提出し審判を受ける必要があり、その後さらに市区町村へその旨届け出なければならないといった具合だ。

手続き自体が難解で時間を要することももちろんだが、そもそもこの廃除自体そう簡単には認められるものではない。廃除には亡くなった方に対する虐待や重大な侮辱、著しい非行が必要とされている。ここでいう虐待や重大な侮辱、著しい非行だと認められるには相当のものが必要であり一般人の感覚からすれば「それって虐待や重大な侮辱、著しい非行に該当するんじゃないの!?」といったものも、該当しないとして廃除が認められないことも多々ある。

それも当然だ。なぜなら財産の相続という重大な権利を奪うのだから。日本の司法は権利を奪うことについて慎重になる場面は珍しくはない。廃除についても司法は慎重な立場を取っている。そう簡単に廃除は認められないのである。

口頭での廃除であり形式的要件を満たされておらず、かつ、廃除の事由に該当はしないと実質的な要件を満たしていない状況において竜也さんの相続権は奪われていない。

町田さん一家の末路

その後、町田一家は弁護士を交えての大戦争。最終的には竜也さん含め兄弟姉妹で4等分しての相続となった。

今回の事件以降、竜也さんの素行はより悪化し、兄弟たちは会えば一触即発の状態だ。心なしか郁美さんと健太郎さん、そして直次さんたち仲の良かった兄弟たちもギクシャクするようになり、年末年始やお盆に全員そろって顔を合わせることもなくなった。

遺産を相続する権利は法で厳格に保護されておりそう簡単に奪うことはできない。意図的に特定の相続人を除いて行った遺産分割も無効となり、親族関係を悪化させるだけに過ぎない。

特定の相続人に相続をさせたくないのであれば廃除の手続きをとるべきだ。それが難しいのであれば、遺言書をきちんと作成して最低限の相続分である遺留分の存在には注意しつつ、相続分を指定しておくべきだ。

今日もまたたくさんの相続が発生している。町田さん一家のような事例の家庭も数多く発生しているだろう。これを機に、読者諸兄においては今一度相続の重みと遺産分割について考えていただきたいところだ。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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