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実録・人間劇場 アジア回遊編~インド・ネパール(10) 忠告を無視してインドの屋台ライフ満喫、病院に人力車で搬送 40度の炎天下…寒さに震える

zakzak by夕刊フジ / 2024年4月26日 15時30分

宿泊していたゲストハウス=インド・コルカタ(夕刊フジ)

インド東部の都市コルカタ。白人旅行者たちがマザー・ハウスに次々と吸い込まれていく中、私は安宿が集まるサダルストリートの路傍に座り込み、屋台で買ったチョウメン(焼きそばみたいなもの)を貪(むさぼ)り食っていた。

旅の道中に知り合った日本人にこんなことを言われた。

「インドでは店で出された水は飲まない方がいいし、生野菜も食べない方がいい。節約したいのはわかるけど、屋台ではなくレストランに行った方がいい。東南アジアとは訳が違うから」

そんなくだらないネット記事にも書いてあるようなことをよくも真顔で言えるよな…などと思いつつ、その忠告を無視して連日、屋台ライフを楽しんでいたのもつかの間、なんだか体の様子がおかしい。コルカタの街は40度を超え、焼けるような暑さだというのに路上で寒さに震えているのだ。

頭も割れるように痛く、臓器が口から出てきそうなほど気持ちが悪い。倦怠感もインフルエンザにかかったときとは比べものにならないほど強く、体中でえたいのしれないウイルスが暴れ回っているのは確かだった。

露店で2リットルの水を買い、ゲストハウスの自室にたどり着くと同時に、私はその場にのたうち回りながら嘔吐した。そして、しばらく布団の上で苦しんだ末、長い眠りについた。

目が覚めたのは次の日の夕方だった。昨日の私の様子が宿の従業員たちから見ても尋常ではなかったらしい。心配した従業員がマスターキーを使って部屋の中まで様子を見に来たのだ。丸一日眠っていたというのに、体調はさらに悪化していた。

「大丈夫? 病院に行った方がいいと思うんだけど歩ける?」

女性に日本語で話しかけられた。後から知ったところによると、彼女はボランティアでコルカタを訪れていた医療従事者だった。宿の従業員が部屋から漏れてくる私のうめき声を聞き、医療に詳しい日本人が近くにいないか探し回ってくれたのだという。

女性はぐったりした私の腕に指を当てて脈を取り始めた。私はもはや自分が起きているのか寝ているのかもわからないほど意識がもうろうとしている。気付けば女性の顔が私の目の前にある。そんなに見つめてどうしたんだろうと思ったが、どうやら瞳孔が開いていて結構マズい状況みたいだ。

「救急車を呼ぼうと思うんだけど、海外旅行保険ってどうなっているかわかる?」

そんなもの入っているわけがない。今思えばクレジットカード付帯の保険があったわけだが、そこまで考える余裕がなかった。

「入っていないです」

こうして私は救急車ではなく人力車で、インド最下層の病院へと搬送されたのだった。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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