“昭和の野球”で崩す大阪2強の牙城 元ドラ1監督の信条…大所帯でも「全員が戦力」
Full-Count / 2024年4月11日 7時5分
■昨秋は45年ぶり近畿大会出場…古豪・興国の喜多隆志監督が重視する人間育成
興国高校(大阪)の監督として就任6年目を迎えた元ロッテ・喜多隆志氏は、120人を超える部員と共に悲願の甲子園出場を目指している。激戦区・大阪を勝ち抜くために必要なものとは? 野球の技術よりも、まずは人間育成を大切にし「全員が戦力」と語る“育成論”に迫った。
同校は1968年に選手権大会で優勝を果たすなど、春夏合わせて7度甲子園に出場。1975年夏を最後に聖地からは遠ざかっているものの、元ロッテ“ドラ1”の実績を持つ喜多監督が就任して以降、着実にチームは成長を遂げている。
大阪で勝ち抜くためには大阪桐蔭、履正社の2強は避けて通れないが、2021年夏には府大会準決勝で履正社を破り、決勝では大阪桐蔭に敗れたものの、3-4と接戦を演じた。昨秋も45年ぶりに近畿大会に出場するなど、“あと一歩”のところまで迫っている。
それでも喜多監督は「周りからは強くなったと言われますが、事実として実力はない。自分たちの位置づけはまだまだ下ですね」と冷静に分析する。技術的な部分もそうだが、指揮官が差を感じるのは「本気で目指すという事が、どういうものなのか」を知らないということだ。
「まだ、うちの生徒たちは頑張り方を知らない。危機的な状況に慣れていない部分もあるが、『何とかなる』と考えている。でも、試合でも厳しい状況になればなるほど、何ともならない。よく、強豪校は良い選手を集めていると言われますが、実際は厳しい練習をやっている。質もそうですが量の部分でも。その差を埋めるには、選手たちに練習という準備の段階から相当な覚悟がいります」
新入生も入部したチームは120人を超える大所帯だが、レギュラーメンバーだけに絞った練習は取り入れていない。A、Bチームの区別はあるが、全員が同じ量の練習を行う。
「周りから見ると『そんなやり方じゃ勝てない』と思われている。ただ、全員が戦力であると伝え続け、本気で甲子園を目指すことを利用しながら、一番は組織で成り立つ社会に出て必要とされる人物に成長をさせる。実際は、この指導が結果的に大阪での上位進出の要因になっていると思っている。たとえ小さな成長であっても、生徒の姿勢に変化が見えた瞬間が一番、やりがいを感じる」と、就任当初から指導法は変わらないという。
■甲子園は目指す場所も…「順序を間違えば組織として崩れていく」
自身は智弁和歌山時代に1学年10人と少数精鋭の中で厳しい練習に耐え、1997年に夏の選手権で優勝を果たした。いわば、高校時代とは正反対の指導法を取り入れているが、「勝ちたかったら人数も減らして練習したらいい。でも、それは僕の中ではなくて、全員で勝って喜び、負けたら全員で悔し涙を流したい。もちろん理想と現実は違うという認識はしている。ただ、勝つことを考えると、やはりやることはやらないと簡単に甲子園は口にできない」と語る。
喜多監督は、自らの指導法を“昭和の野球”と表現する。近年は自主性が問われる時代だが、「その(自主性をもつ)きっかけは作ってあげないといけない。だから、妥協はしない。もちろん昔とは違いますが、数をやって覚えるところから始めます。練習の強弱はつけてますが、オフの日は数少ない。時代に反しながらじゃないですが、チームを1つにするために、人と人とのつながりを持つことが大事」と、チーム強化のために人間味を大切にしながらも妥協はしない。
指導陣には「彼の存在は大きい」と信頼を置く、慶大時代の同級生で元近鉄、オリックスの三木仁コーチが在籍。他にも元阪神の清原大貴コーチら実績、経験豊富なコーチがそろうだけに「本当に助かっています。僕はほとんど技術的に教えることがないです(笑)」と感謝する。
指揮官として、今年で6度目の夏を迎える。「もちろん甲子園は本気になって目指す。ですが、指導の順序を間違えば組織として崩れていく。身の丈を知って泥臭く、いかに辛抱して我慢できるか。生徒全員で成長していきたい」。古豪復活へ、喜多監督の飽くなき挑戦は続く。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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