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もしも他人の夢をのぞけるとしたら――それは禁断の果実の味わい『TRAUMA』

ガジェット通信 / 2012年2月23日 19時0分

『TRAUMA』のタイトル画面
「夢ゲー」というジャンルを勝手に提唱したい。『えりかとさとるの夢冒険』とか『ゼルダの伝説 夢をみる島』とか、なぜか夢を題材にしたゲームには良作が多い。そういえばサウンドノベルの名作『街』も、一番印象に残っているのはダンカンのシナリオだ。
夢を見るという行為は、ゲームで遊ぶことにちょっと似ている。今回取り上げるインディーズゲーム『TRAUMA』もそんな「夢ゲー」のひとつ。夢のあるじは、病院のベッドに横たわる一人の女性。交通事故に巻き込まれ、こんこんと眠る彼女は、その意識の奥底で4本の短い夢を見る。
巨大な岩の下敷きになったテディベア。廃工場を徘徊するぼんやりとした人影。どこかわからない深夜の道路。石畳の奥へと続く2本の線路――。
いずれも彼女にとってはゆかりのある光景のようだ。操作は『Googleストリートビュー』のような感じで、見たい場所、行きたい場所をクリックすることで、彼女は夢の中を歩き、探索する。それぞれの夢にはゴールがあり、それが何なのかを見つけることで、彼女は夢から目覚める。マウスで特定のシンボルを描くことで、こちらから世界に干渉することもでき、大抵はそれがゴールへのトリガーになっている。
このゲームの魅力は、何と言ってもそのアートワークだろう。膨大な数の写真をつなぎ合わせて作られた「夢」の世界は、妙なリアリティがある一方、奇妙な非現実感にも覆われていて、本当に誰かの夢の中をGoogleストリートビューで歩き回っているような気分になれる。このあたりはYouTubeのトレーラー映像を見ていただくのがてっとり早いだろう。
TRAUMA Trailer(YouTube)
http://youtu.be/AHWSJiJUWEc
黒澤明の『夢』をはじめ、夢をテーマにした作品には怖いものも多いが、本作もホラー的要素はないのにやたらと「怖い」。夢の中だから、ときおり世界がぐにゃっと歪んだり、見えるはずのないものが見えたりといった不条理なできごとは起こるが(このへんはセガの『スイッチ』みたいだ)、実はそれ自体はさほど怖くなく、ただただ全体にただようダウナーなムードと、「他人の夢をのぞき見る」という行為そのものが怖い。
夢の中をさまよい、彼女の人格や思い出の断片らしきものを見つけるたびに、夢がどんどん「自分のもの」になっていく。描いたシンボルに世界が反応するたびに、禁断の扉を開けてしまったような背徳感に襲われる。だけど、それがなんだか妙に楽しくて、そして猛烈に怖い(「怖い」と「楽しい」は実はけっこう近いところにある)。もし誰かの夢に入れる道具をドラえもんが出してくれても、いざ使うとなったけっこう勇気がいるかもしれない。
膨大な数の写真が夢の世界をリアルに描き出す
遊んだ後もしばらく残る後味の悪さ(褒め言葉ですよ!)はまるで現代アートのようで、ゲームというよりは一種のインタラクティブ・アートと言った方がよさそう。クリアするだけなら30分ほど、真のエピローグを見るにはさらにあと1~2時間といったところ。そう時間がかかるゲームでもないので、ぜひもっと多くの人に、このゾワゾワと意識の深層をなでるような興奮を味わってほしいと思う。
なお本作は、ユーザーが好きな値段をつけて購入することができる「Pay What You Want」を採用しており、最低100円から購入可能だ。同作品を配信している『PLAYISM』のページでは、Flashによる無料体験版も公開されている。
(C)2011 Krystian Majewski
『TRAUMA』


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