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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:うたかたの夢(帝京高・三浦颯太)

ゲキサカ / 2018年11月24日 7時34分

敗戦の瞬間、帝京高MF三浦颯太は静かに立ち尽くしていた

東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 タイムアップのホイッスルが駒沢陸上競技場の上空に吸い込まれる。「『ああ、終わっちゃったなあ』って。それだけで、他には何も考えていなかったです」。時間にして30秒くらいだろうか。3年間に渡ってカナリア軍団を牽引してきた8番は身じろぎもせず、ただそこに立ち尽くしていた。それはまるで水に浮かぶ“うたかた”のように、掴み掛けては消え、消えては掴み掛けていた“夢”が、とうとう弾けてなくなった瞬間。三浦颯太は、ただそこに立ち尽くしていた。

 その揺るぎない期待は、指揮官の言葉が物語っていた。「昔のジュビロで言えばN-BOXというのがあったけど、三浦のM-BOXというか、あそこでアイツが配球できるので」と話したのは、帝京高を率いる日比威監督。1990年代後半から2000年代初頭に掛けて、隆盛を誇ったジュビロ磐田。そんな彼らを中心で束ねていたのが、現在はジュビロで監督を務める名波浩であり、彼の頭文字を取って“N-BOX”と命名されたシステムは圧倒的な機能美を有し、Jリーグで猛威を振るった。それを模した“M-BOX”というフレーズ。名門校でそこまでの存在に登り詰めることも容易ではないが、その“M”が入学式を控えている新入生だとすればなおのこと。1年生の4月の時点で、既に三浦はそういう役割を託されていた。

「たくさん1年生が関われていることは来年も再来年も経験を生かしていけるので、監督に感謝したいです」「久我山とか強豪とやったら勝てないと思うので、もっと力を付けていきたいですし、全国出場を目指してやっていきたいと思います」。得意の左足で雄弁に主張するプレースタイルとは対照的に、消え入りそうな声で言葉を探す姿が、まだ15歳だということを思い出させてくれる。「正直1年生から出られるとは思っていなかったんです」と本人も振り返るが、ピッチ外ではどこか所在無げな雰囲気を当時の三浦は纏っていたように記憶している。

 前年度は5年ぶりにファイナルまで駒を進め、PK戦で敗れはしたものの、復権へ向けての準備も万端に、全国出場を明確に掲げて挑んだ選手権予選。だが、スタメンリストから10番を託されていた佐々木大貴と三浦を含め、1年生の名前はブラジル人留学生のサントス・デ・オリベイラ・ランドリックを残して消える。準決勝での西が丘は三浦もスタメンに返り咲いたものの、駒沢陸上競技場での決勝では再びベンチへ。佐々木と共にラスト20分のピッチへ解き放たれるも、チームの敗戦をピッチで突き付けられることとなる。最後は小さくない悔しさを覚えつつ、帝京での1年目は幕を下ろした。

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