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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:ヒーローは遅れてやってくる(青森山田高・小松慧)

ゲキサカ / 2019年1月26日 17時55分

 11月の青森。リーグ優勝を巡る大一番は鹿島アントラーズユース戦。1点ビハインドの厳しい状況でも声は掛からない。終盤に青森山田が劇的に追い付いたものの、最後まで彼に出番は訪れなかった。試合が終わってからだいぶ経って、偶然グラウンドを歩いている姿を見付け、久々に話し掛ける。「いやあ、出たかったんですけどね」。複雑な表情を浮かべながらも、「もうやるしかないんで。選手権も頑張ります!」と言い切った口調は力強かった。相変わらずのナイスガイ。短い会話を交わし、去って行く背中を見送りながら、「次にインタビューする機会は来るのかなあ」と何となく思ったことを記憶している。

 どうしても聞きたいことがあった。年が明けて1月5日。等々力。選手権準々決勝の矢板中央高戦を逆転で制し、2年ぶりのベスト4進出を決めた試合後。ミックスゾーンに現れた彼を捕まえる。2回戦(対草津東高)でゴールを奪った際に、実況の方が口にしたフレーズに聞き覚えがなかったからだ。「ねえ。いつから“炎のストライカー”になったの?」。満面の笑顔から答えが返ってくる。「なんかインタビューで『ずっと“炎のストライカー”を意識してやってます』って言ったら、良い感じでそうなっていて、今はそれが結構キテます」。得意気な表情が何とも可笑しい。

 滑らかな話しぶりに好調さが窺える。「初戦のゴールはメチャメチャ嬉しかったんですけど、何やればいいかわかんなくて、とりあえずジャンプして、喜びを爆発させたらあのポーズになっちゃいました。ダサかったですよね(笑)」。熱さは初めて会ったあの時のままだ。「準決勝も正々堂々と今日みたいに熱いゲームができれば、見ている人たちがその想いに心を動かされて感動できると思いますし、自分はどんなに泥臭くてもいいので、点を取ったりとか、チームのために走って、感動させられるように頑張りたいと思います」。

 話を聞き終えると、後ろに控えていたメディアの女性に「“炎のストライカー”ですよね?」と話し掛けられていた。意外と『結構キテる』ようだ。次は準決勝。埼玉スタジアム2002。チームもアイツも真価が問われる一戦になる。

 後半41分。ピッチサイドに13番が姿を現す。一時は逆転しながらも再逆転を許し、1点ビハインドで突入した最終盤。青森山田の命運はこの男に託された。「監督の指示はいつも『冷静に』とか『精度にこだわって』とか技術面のことを言われることが多いんですけど、今日は『決めてこい』って一言だけだったんです」。“いろいろな条件提示”はなかった。シンプルな一言に気持ちが奮い立つ。やるしかない。ただ、やるしかない。

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