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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:ヒーローは遅れてやってくる(青森山田高・小松慧)

ゲキサカ / 2019年1月26日 17時55分

 後半43分。ファイナルの埼玉スタジアム2002に詰めかけた5万4千の歓声が耳に届き、ノートへ落としていた視線がピッチに引き戻されると、既にラインの裏へ抜け出していた。2日前に見たのとまったく同じ光景が、目の前に広がる。その刹那。ふと、本当にふと思った。「ああ、やっぱりアイツ持ってたんだ」。

「一昨日のシーンしか思い浮かばなかったです。『ああ、コレ来た』と思って、『1対1だ。どうしよう、どうしよう』というよりは、『来たな!今日は決めてやるぞ!』という感じだったので、しっかり流し込めて良かったかなと思います」。数秒後。2日前に見たのと正反対の結果を自ら引き寄せた13番は、歓喜に沸くスタンドの方へ一目散に駆け出していく。青森山田の日本一を決定付けるダメ押しゴール。“クリスティアーノ・ロナウドポーズ”もこの日はきっちり決める。しかしアレだけ外してきたのに、ここで決めちゃうのかよ。思わず笑ってしまう。アイツはやっぱり持っていた。

 13番を囲んでいた凄まじい数の報道陣の輪に遅れて加わる。「恥ずかしいとか一切思わず、マジメに“炎のストライカー”と言い続けてきたので、その名前、キャッチフレーズが世の中に広まった良い大会になったと思いますし、たぶん誰よりもインパクトを残せたんじゃないかなって思います」。ついつい言いたくなった「そうなのかな?」という疑問は口に出さず、“炎のストライカー”の言葉へ輪の後方から耳を傾ける。

 少しずつ人がほどけ始め、ようやく彼と話せるポジションが回ってくる。1年間を思い出せばいろいろと聞きたいことはあったが、一番気になることをストレートに尋ねてみる。「なんであんなに入らなかったゴールが、ここに来て入ったんだと思う?」。一瞬考えた後、こう想いを紡ぐ。「たぶん技術向上はしていないと思うんですけど、今まで自分が1年間サッカーに対してもそうですし、寮長なので寮生活も含めて、すべてにおいてマジメに、やらなきゃいけないことはやってきたと思いますし、自分のやってきたことを信じられなくなったら男じゃないと思うので、自分のやってきたことを信じて、しっかりプレーできたことが、こういう形に繋がったのかなと思います」。

 その言葉に頷くのは、FC東京U-15深川時代の監督に当たる奥原崇だ。青森へと旅立った後も彼の成長を見守り続けてきた恩師には、すべてお見通しだった。「どれだけの簡単なシュートでも外し続ける時は、日常の取り組みと完全に一致しているので、一切マグレもないと僕には見えている感じです。ただ、取り組みのどこかにまだ隙がある時に、そこを全部詰められる所が彼の能力なんじゃないかなと思っているので、決勝のシーンは『またぶつけるかな』と思ったんですけど(笑)、取り組みが正しく積み上がっている時はああいうゴールも取れるし、準決勝と決勝では努力を積み上げてきた人や、汗をかいてきた人に起こりうるゴールに僕には見えました」。

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