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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:大島秀夫という生き方(横浜F・マリノスJY追浜コーチ・大島秀夫)

ゲキサカ / 2019年4月29日 7時3分

 引退した翌年。大島にはJリーグ功労選手賞が贈られた。「オレより周りの方が喜んでた。ギラヴァンツとモンテとF・マリノスと連名で推薦してくれたらしくて、それは凄くありがたかった」。決して派手なキャリアではないが、彼の19年間がきっちり形として評価された気がして、本当に嬉しかったことを思い出す。ちなみに、このエピソードには後日談が付く。「功労選手賞をもらったけど、その次の年からできた制度だと功労金が300万出るって聞いた時に『えっ!』って。『オレの時まで出なかったのかよ!』って(笑) 運がないんだよね。タイミングが悪いんだよ」。その話が何とも彼らしく、ついつい笑ってしまったことも個人的には大事な思い出だ。

 何度か前述したように、大島は既に指導者としてのセカンドキャリアを歩み出している。日産自動車追浜総合グラウンドが今の“ホームグラウンド”。中学生とサッカーに向き合う日々は、この4月で3年目を迎える。まだ寒さの残る春先の追浜に彼を訪ねた。少し遠めからグラウンドを眺めると、独特の歩き方ですぐに居場所がわかる。それほど言葉数は多くないが、必要なことを的確に、わかりやすく子供たちへ伝えていく。そんな姿を見ている内に、改めてもう大島が“プロサッカー選手”ではなくなったことを実感した。

「最初の頃より、指導も自分の中ではちょっとずつ整理できているかなとは思う。でも、10年やっている人も20年やっている人も、たぶんコレで完成形というのはないだろうし、サッカーも変わればいる人も変わるし、毎日が、毎年が勉強というか、そういう気持ちでやっていかないといけないなあってつくづく思うかな」。

 この日のトレーニングは新2年生の担当。13歳の眼差しは真剣で、まっすぐだ。それゆえに指導者が負う責任も決して小さくない。「やっぱり自分の言葉が直接返ってくるというか、サッカーに対しても普段のことに対しても、自分が整理できていないとそのまま現れるから、凄くそういうのは責任を感じるかな。この純粋な、かわいいヤツらだからこそ、ちゃんと成長させてあげないといけないなって」。

 思い出したかのように、大島がこう呟く。「たまに夢を見るんだ。自分が現役の時の。『アレ、復帰した?』って(笑) たまにね」。聞いてみたくなった。「ゴールとか決めてるの?」。小さく笑って首を振る。「しない。全然活躍しない(笑) そこはなぜか動けないオレだってわかってるの。『オレ、なぜか現役だな』って。『でも、ゴールは無理だな』って(笑) 潜在的に残ってるんだろうね。あの頃の感覚が」。どこまでも彼らしいエピソードだと思う。ただ、そんな彼だからこそ、きっと今まで周囲の仲間から多くの愛情とサポートを受けてきたのだろう。そして、これからも彼の周囲には常に愛情とサポートを注いでくれる仲間がいるであろうことも、何の疑いもなく確信している。

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