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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:師資相承(関西大一高・芝中信雄監督)

ゲキサカ / 2019年6月18日 20時35分

 2年近く監督代行という立場でチームを率いた時期も大阪制覇には届かず、良い報告ができないまま、佐野は闘病生活の末に他界してしまう。2015年からは正式に“監督”の座を引き継ぐことになったが、前任者の大き過ぎた存在も、後任の“教え子”に圧し掛かってくる。「ホンマ豪傑のような方でしたし、凄い監督やったので、そのスタンスを引き継ぎながらずっとやっていたんです。でも、替わってからも勝てないし、どうしても比較されるんですよね。それで2,3年は苦しみました」。

 ところが監督業をスタートさせて数年が経った頃、芝中はようやくある境地に至る。「『たぶん名監督の後の監督さんは、皆さんこういうふうに思ってはるんじゃないかな』と。『苦しんでいてもしゃあないから、自分は自分のやり方でやるしかないな』と思えたんです」。少しずつ、少しずつ、“芝中色”がチームの中に反映されていく。

「ベースは変わらないですけど、子供らをゲーム前に笑わせたり、冗談も言うたり、ちょっと自分の個性を出しながら来ているつもりなんです」。自身は前任者の幻影から解放されつつあったが、全国への道のりは遠いまま。「『今年は良いチームができた』『今年は頑張れる』『今年は戦える』と思っても勝負弱いというか、ここ一番で勝てなくて。『それは何でだろう』『何でなんだろう』というのはチームの中でもみんな考えていたんじゃないかなと思います」。築いてきたはずの栄光は、徐々に過去のものへとなりつつあった。

 2017年、春。関大一に転機が訪れる。「普通ならウチが声を掛けても、阪南さんや履正社さんに行っていたんですけど、こっちから声を掛けた子がみんな来てくれたんです。たまたまそれにプラスアルファで、一般の子でもトレセンに入っていた子とか、背の高い子とか足の速い子とか、そういう子たちが入ってきてくれて。だから、『この子らが3年生になった時に勝負できるかな』というのが正直な所でした」。不思議と人材が集まる学年というのはあるものだ。先を見越した上で、我慢しながら起用し続けてきた学年が今の3年生。すなわち2019年は勝負の年として位置付けられてきていたのだ。

 選手たちも指揮官の期待に応える日常を積み重ねていく。「今の3年生はマジメだから、練習でも限られた本数とか少ない本数を、手を抜かずに一生懸命やるんですよ。やっぱり上級生が手を抜いていたら、下級生がそれを見ますからね。だから、今年はもう明らかにチームとして戦っている雰囲気はありますし、『この3年生はみんな付いていく代なんちゃうかな』と思いますね」。そして5月。その先は沖縄へと続く勝負の扉に、彼らは手を掛ける。

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