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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:師資相承(関西大一高・芝中信雄監督)

ゲキサカ / 2019年6月18日 20時35分

 芝中はある“失敗”を自ら明かす。「今回の組み合わせのクジを引いたのは私なんですよね。生徒を休みにしてクジを引いたら、興國さんが入って、履正社さんも入ってきて。学校に帰って、彼らにその話をしたら誰も笑いませんでした(笑)」。組み込まれた難敵ぞろいのブロック。この大会へ懸ける想いも強かっただけに、素直に笑えなかった彼らの心情は十二分に理解できる。

 ところが、『ピンチはチャンス』とはよく言ったものだ。今年も年代別代表選手を抱え、府内屈指のタレントを有する興國高を1-0で退けると、近年はことごとく敗退を突き付けられてきた履正社高もPK戦で撃破。死のブロックを制して、決勝リーグへと駒を進めてみせた。芝中はこの成果が大きかったと強調する。「興國に勝ったことが自信になって、一戦一戦強くなったのは事実だと思います」。4チームで行われる決勝リーグでも、初戦で大阪桐蔭高相手に2-0で勝利を収め、2試合目は東海大仰星高と引き分け。この時点で首位に浮上したものの、2枚用意された全国切符の行方は決まらないまま、運命の日がやってくる。

 6月2日。決勝リーグ最終日。第1試合は東海大仰星が大阪桐蔭に2-1で逆転勝利。この時点で勝ち点3にとどまった大阪桐蔭の敗退だけが決定。勝ち点を4に伸ばした東海大仰星にも全国出場の可能性が残された状況で、第2試合の関大一と阪南大高のラストゲームはキックオフされた。

 引き分け以上で2位以内が確定する関大一に対し、得失点差の関係で勝利のみが求められる阪南大高。立ち上がりから勢いは後者が鋭い。「阪南さんの方が出足も気持ちも上でしたね。ウチが飲まれてしまったというのが現実かもしれません」と芝中。阪南大高に先制点を奪われ、1点のリードを許して前半の40分間は終了する。「ハーフタイムにロッカーで怒鳴りました。今日のテーマは『自分に負けるな』と。昨日からの連戦で疲れてる中で、自分に負けずに走れるか、あるいは声を出せるかを今日のテーマとしてやっていたのですが、前半はこっちが思っているようなことはできなかったですね」。不甲斐ない戦いぶりが許せなかった。

 迎えた後半について、多くを言及するつもりはない。ここまでに両チームが得た勝ち点と得失点差の関係で、そのままのスコアで終われば、どちらも全国出場が決まるシチュエーションとなったため、試合はほとんど動かなかった。その展開に対する賛否は当然あると思うし、東海大仰星の選手たちの心情は察して余りあるが、これは彼らの問題というよりも制度設計の問題である。リーグ戦というルールの中で、結果を出すために阪南大高も関大一も最善の選択をしたということだ。試合後。関大一のある選手は、顔を両膝の間にうずめながら泣きじゃくっていた。彼の感情を客観的に説明することはできない。しかし、あの光景が今回の結果を如実に表していたように思う。

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