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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:師資相承(関西大一高・芝中信雄監督)

ゲキサカ / 2019年6月18日 20時35分

 芝中は苦渋に満ちた表情で、こう話している。「彼らには『この責任はみんな僕にある。僕が背負うから君たちは何も気にする必要はないよ』ということは言いました。ただ、違う世界を見れば、彼らにとって違う何かが見えるかもしれない。その想いだけがあるんですけど、自分の中でも整理できていないですね。大人でもワールドカップであんなことがあったので。ただ、16歳、17歳、18歳の高校生に対して全国に行けるということで、ああいうふうにやらしていいものかなというのは、自分の中で今後もずっと続いていくんじゃないかなと思います」。これからもこの方式で大会が行われれば、同じ事態が起きる可能性は否定できない。何がより最善の形なのかが、これを契機に再考されることを願ってやまない。

 前述したように、関大一にとって夏の全国は13年ぶり。あの“国立”からも10年が経過しようとしている。キャプテンの黒田翔太が発した言葉が記憶に残る。「『昔は強かった』とか、『10年前は強かった』とか、そういうことを耳にする機会が多くて悔しい想いをさせられていましたけど、その悔しい気持ちを芝中先生の方が味わっているのは選手全員がわかっていましたし、『何としても芝中先生を全国に連れて行きたい』という想いで練習してきたので、こういう形ではあるんですけど、全国を決められて素直に嬉しいなと思います」。“先生”の気持ちは“教え子”が一番よくわかっている。この想いの継承は彼らの大事な強みと言っていいのかもしれない。

 とはいえ、確かな時代の移り変わりも指揮官は感じているようだ。おなじみのフレーズを引き合いに出し、「佐野先生がおった時みたいに『月まで走れ』言うてて、夏場に走らせたら今はすぐ倒れてしまってとんでもないことになるんで、そこの運動量は落ちました(笑) 皆さんから『“月まで走れ”って言うてるけど、どんだけ走ってんの?』と言われても、他のチームと同じぐらいですよね」と笑いつつ、こうも続ける。

「でも、走れないと試合には出れないです。それはもうコイツらも『頑張る所を頑張る』『守らなあかん所を守らなあかん』『帰ってこなあかん所は帰ってこなあかん』というのはわかっているから、そこはもう伝統じゃないですかね」。黒田もそのことについて言及する。「僕たちは全然上手くないですし、相手より走って、しんどいことしないと勝てないのは全員がわかっているので、そういうことを心に決めてやっています」。もうおなじみのフレーズをあえて口にしなくても、誰より選手たちが自分たちの生命線をはっきりと理解している。

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