『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:20年後の帰還(ヴィアティン三重・和波智広)
ゲキサカ / 2019年7月8日 22時17分
「いつもやるポジションよりは1個前で、どうしても前の選手は疲れるので、その分しっかりカバーしないといけないと思っていましたけど、点差があったので気持ち良くというか、楽しみながらできました」。39分には井上丈の右CKをヘディングで合わせるも、ボールは枠の上に外れ、これには「まあ、そう簡単には入らないですよね」と苦笑い。以降も左サイドハーフの位置でチームの勝利を引き寄せるべく、丁寧にプレーを重ねていく。
夢のような時間こそ、過ぎ去るのは早いもの。アディショナルタイムも含めれば15分弱。かつての“家”との再会に終わりを告げる、短い3度の笛。「複雑な所はあります。ちょっと点差が開いたので、あまり喜ぶのもとは思いましたけど、勝つことも恩返しというか、『ありがとう』と伝えられるメッセージかなと思いますし、ベルマーレにはリーグ戦に集中してもらいたいなと思いますね」。最高潮に達するオレンジの歓喜。0-4という圧倒的なスコアで、和波にとって特別な90分間は幕を下ろした。
見慣れたメインスタンドへ挨拶に向かうと、あの頃と同じ色のユニフォームを纏ったサポーターが、あの頃と違う色のユニフォームを纏った自分とチームメイトたちに、大きな拍手を送ってくれる。「試合が終わってから温かく迎えてくれたのは、本当に沁みました。あの頃が甦るというか。『本当にサッカーをやっていて良かったな』と思う瞬間でしたね」。それはまるで、サッカーというかけがえのないものと真摯に向き合ってきた20年間に対するご褒美のような瞬間で。きっと“7月3日”をこの先、和波が忘れることは決してないだろう。
後藤は和波がチームに与える影響を、こう力説する。「加藤秀典もそうですけど、大ベテランの選手が率先して準備、片付け、トレーニングをストイックにやっている姿、スタメンで出られなくても腐らずに常に全力で練習して、チャンスが来たら今日みたいに試合に出る、その姿は『本当にお手本になります』と必ず若い選手が言うんですよ。それはクラブとしても求めていた所ですし、彼らは日頃の態度から尊敬されているので、そこがウチの土台を支えているような気がするんですよね」。
その上で、今後のクラブに必要な人材だという認識もはっきり持っているようだ。「フロントとして見ると、活躍する場は物凄くあるので、それがスカウトなのか、スクールコーチなのか、アカデミーの監督やコーチなのか、やって欲しい仕事はいくらでもあります。だから、選手を続けて欲しいとは言いながら、『いつでも“こっち側”はウエルカムだよ』と思っています。本人には言ったことないですけど(笑)」。
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