『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:20年後の帰還(ヴィアティン三重・和波智広)
ゲキサカ / 2019年7月8日 22時17分
和波も以前から抱えていた想いを明かす。「地元にJリーグのクラブがないことが、子供たちにサッカーを教えていて、やっぱり悲しいんです。どこを目指すかという所で、もっと今日みたいな雰囲気を味わって、目標や夢を持ってくれるとまた違うかなと思うので、そこですよね。そういう土台をできるだけ作れたらなと思いますよね」。
ニュアンスは違うものの、後藤も和波も揃って“土台”というフレーズを口にした。彼らが今築いているものは、そういうものなのだろう。クラブのため。サポーターのため。そして、何より三重県の子供たちのため。幾重にも積み重なっていくはずの未来を信じ、その“土台”を作りたいという使命感が、ヴィアティンを取り巻く人々を衝き動かしている。
あえてシンプルに尋ねてみる。「夢ってありますか?」。少し考え、「夢かあ…」と呟いた和波は、自らの心を探るように少しずつ言葉を紡いでいく。「まあ、選手の内は近くの夢というか、とりあえず天皇杯も1つずつ勝ちたいと思うし、Jリーグに上がりたい気持ちもあるし、たくさん秘めた夢を持ちながら、自分ができる限りのことをやりたいなと思います。叶えて、初めて良かったと思えるはずなので、夢はたくさん持っていたいですし、こういうふうに好きなサッカーをやって生活が送れていることを、幸せに思わないといけないですよね。今、幸せだと思います」。
ベルマーレに“20年後”が来たように、ヴィアティンにも“20年後”が必ず来る。その時、クラブに関わる人々はこの“土台”の時期のことをきっと思い出す。後藤大介という男の献身を。和波智広という男の躍動を。そうやって積み上げられていく今が、希望に溢れる未来を形作っていく。「オレンジを身に纏い この場所で魅せろ三重魂!」。20年後の“この場所”は果たしてどの場所なのか。それを夢見る権利は、言うまでもなくオレンジを身に纏う彼らの1人1人に等しく与えられている。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史
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