『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:超える(大成高・豊島裕介監督)
ゲキサカ / 2019年7月23日 21時32分
「『どこから手を入れようかな』と。それでまずは『3か月間試合させないよ』って。挨拶、荷物の管理、時間を守ること、仲間を大切にすること、って全部ルールを決めて、『これを全部守れたら初めて試合を組んであげる』って言って。そこからスタートしたんです」。とはいえ、生徒としっかり向き合うことの大切さを学んだのもこの頃だという。「彼らもちゃんと向き合ったら、本当にこちらに向き合ってくれたんです。みんな素直だったんですよ。だから、あの子たちのことも忘れていないです」。
サッカー面でも以前は認識すらなかった大会を知ることになる。「『選手権の“地区予選”って何だ?』と。帝京は常にシードから全国に出るのが当たり前だったので、“地区予選”を知らなかったんです。でも、ウチはそこを抜けられないのが当たり前で、1回都大会に出た時に学校が凄くフィーバーしたんですよ(笑) 『これぐらいなのか…』と思いました」。
すると、1人での指導に限界を感じ始めていたタイミングが、ある同級生の人生の岐路と交差する。高校時代のキャプテンであり、JFLのソニー仙台FCでプレーしていた藤倉寛が現役を引退し、教員を志望しているという話を耳にした豊島は、すぐさま行動に打って出る。「藤倉には『大成を受けろ』って勧めた上で、理事長の所に行って『コイツは絶対採ってください』って言って、何とか採ってもらえたんです(笑)」。
豊島は2人の関係性をこう表現する。「彼はとやかく言うタイプじゃないんです。『オレが引っ張っていく』というよりはドスンと構えているタイプで、僕は気持ちが出てしまうタイプなので、うまくコントロールしてもらっていると思います。藤倉は本当に信頼できる男ですね」。2008年。今から11年前。まだ“地区予選”を抜けるのに一苦労していた頃。高校の同級生タッグが大成のグラウンドでスタートした。
少しずつ選手も集まり出し、少しずつ結果も伴い始めていくが、豊島と藤倉が当たり前のように戦っていたような舞台までは辿り着かない。確実にチームとしての力が伸びている実感と、掲げた目標に到達しないジレンマ。さらに「やっぱりツラい想い、苦しい想いを一緒にしているので、『アイツらと一緒だったら乗り越えられる』と思って集めちゃいました(笑)」と豊島が笑ったように、2人の同級生に当たる日野寛もGKコーチとして加わり、帝京OBの3人体制でチームを運営していく中で、本格的なブレイクスルーは果たせないままに、時間は流れていく。
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