『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:超える(大成高・豊島裕介監督)
ゲキサカ / 2019年7月23日 21時32分
2017年。藤倉が監督、豊島がコーチを務めていたタイミングで入学してきた選手たちを見て、豊島はあることに気付く。「今までの子たちとサッカーに対する姿勢がちょっと違うんじゃないか」。彼らとの初合宿の際に目にした光景は、いまだに鮮明に憶えている。「僕が忘れもしないのは初めて合宿に行った時に、今のキャプテンの杉田が集合の1時間前に1人でグラウンドに来て、用具をもう1回チェックしていて。その10分後に今の副キャプテンの宮脇がもう来ていたんです」。
宮脇茂夫もそのことを記憶していた。「憶えています。中学の時はキャプテンをやっていて、普通の行動がそういう感じだったので、いつもの練習もギリギリには行かないですし、今も変わっていないです。高校に入ってから変えた訳ではないですね」。そういう選手たちが、この代には揃っていたのだ。
豊島が帝京時代に一番の“売り”としていたのは走力であり、常に走る練習では先頭を走っていたほど。そういうメニューは豊富に持っていたが、この代にはそれを駆使する必要がないと判断した。「『こっちが与えるトレーニングを100でやって欲しい』と。それが1年生の時から根付いていて、こっちがコントロールをしてあげないと体が壊れちゃうくらい彼らはやってくれるんです」。今の3年生は、いわゆる“素走り”の練習をしたことがないそうだ。
それは自分自身に対する新たなチャレンジでもあった。「僕は一番の強みを自分で封印したんです。そうすると、自分が考えないといけないじゃないですか。トレーニングでもそれを補える体づくりが必要なので、それを封印したことで『できていないのは自分の責任だ』って。昔は『オマエ、何でできないんだ』って感じていたことも、『ああ、教えられてないからできていないんだ』と思い始めることができたんですよね」。
“後輩”の影響は先輩たちの意識にもポジティブな変化をもたらした。「実は去年の3年生たちも、彼らに触発されて変わっていったんですね。もともと『遊びも好き』『サッカーも好き』が並列だったんですけど、今年の3年生たちは『サッカーが好き』がずば抜けて上にあったので、みんながそういう意識になっていって、ある意味で本気になったということでしょうね」。ようやく豊島の中で、自らの考える『サッカーが好き』の基準を十分に満たしたグループが醸成されていく。
再び豊島が監督に復帰した昨年度の選手権予選。大成は初めて西が丘まで勝ち上がると、2人のJリーグ入団内定選手を擁する成立学園高を1-0で振り切り、とうとう全国大会出場に王手を懸ける。決勝の相手は国士舘高。悲願達成へ周囲の期待も大いに高まったが、結果は0-1の惜敗。一気に階段を駆け上がることは許されなかった。
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