『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:超える(大成高・豊島裕介監督)
ゲキサカ / 2019年7月23日 21時32分
スタメンの半分以上が2年生というメンバー構成で経験したこの敗戦は、彼らの心に小さくない楔を打ち込む。「決勝まで行けたことは嬉しかったですけど、決勝で勝たないと本当に意味がないと思ったので、あの負けは大きかったですね」と話すのはセンターバックの金井渉。最後の最後で勝つことと負けることが、どれだけの違いをもたらすか。肌で感じた選手たちの決意もより強固になる。
さらに、3人にとって帝京の後輩にあたるノグチ・ピント・エリキソンも新たにGKコーチへ就任し、より充実した体制を構築したが、杉田や宮脇、金井渉が最高学年になって最初の公式戦の関東大会予選でも、準決勝で東久留米総合高に2-3と競り負け、東京の代表権にはあと一歩で手が届かない。そして5月。運命の総体予選が幕を開ける。
迎えた二次トーナメント。組み合わせが決まった時から、母校の名前は常に頭の片隅で意識せざるを得なかった。初戦で難敵の実践学園高を1-0で下した試合後。豊島はこう語っている。「実はまだ母校と戦ったことが公式戦では1度もないので、ウチが全国大会に行くチャンスの時は、やっぱり母校とやるのかなという、そんな気もちょっとしているんです」。帝京はトーナメントの“山”の一番上。お互いに勝ち上がれば激突するのは準決勝。2校が全国切符を手にすることができる東京の予選では、そこが決戦のステージとなる。
準々決勝の堀越高戦は先制を許しながらも、延長で逆転に成功して2-1で辛勝。その1つ前の試合で、やはり延長の末に勝利を収めていた帝京との対戦が決まる。3度目となる代表決定戦への意気込みを問われ、答えた豊島の言葉が印象深い。「『揃ったな』って思っています。帝京と“決定戦”ができるのは『もう何かの縁かな』って。だから、『3度目の正直』という言葉を使いたいなと。でも、帝京なしでは僕はここにいないし、やっぱり母校愛はありますし、凄く良いチームですから、失うものはないのでチャレンジ精神でやっていきたいと思っています」。母校と初めて対峙する試合は、全国に行けるか、行けないかという結末だけが突き付けられる大一番。因縁に彩られた勝負の準決勝がやってくる。
6月22日。かつて忠誠を誓ったカナリア色のユニフォームを目にしても、なぜか落ち着いている自分にはっきりと気付く。ここを超えなくては、悲願を引き寄せることはできない。それでも、カナリア色はただの“対戦相手”だと割り切ることができている。豊島はなぜか落ち着いている自分にはっきりと気付いていた。
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