『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:真夏に咲いた桜の戴冠。日本一を手繰り寄せた3年生の努力と献身(セレッソ大阪U-18)
ゲキサカ / 2022年8月5日 7時42分
日本一を勝ち獲り、最高の仲間と写真撮影をする時も、表彰式でカップを掲げる時も、とにかく16番ははしゃいでいた。「アレは自然ですね(笑)。無理してないです。バリ嬉しかったです!」。この男の漂わせる空気感は、きっとこれからもチームの苦境を幾度となく救っていくことだろう。
やっと、この場所に戻ってきたんだ。DF長野太亮(3年)は周囲への感謝の中で、サッカーのできる喜びを噛み締めていた。ヒザの大ケガを負って手術したのはちょうど1年前のこと。それから今年の5月まではリハビリに励む毎日を送り、ボールを蹴ることもままならない時間を強いられる。
「正直、焦りはありました。去年の初めの方は試合に出させてもらっていたんですけど、その時はずっと負けていて、チームが9月以降ぐらいに勝ち出した時には僕もちょうどサッカーができていなかったので、『このままだったらヤバいな』というのは自分の中でもありましたけど、『今できることをしっかりやろう』とも思っていました」。
苦しい日々の中で、気付いたことがあった。家族、チームメイト、チームスタッフ、ドクター。今までこんなにも多くの人に支えられて、サッカーをしていたんだと。それからは、戦線復帰が自分だけのものではないことを悟る。「自分が復帰した時には今まで以上のプレーをできるようにすることと、いろいろな方に携わってもらってきた中で、その人たちへの感謝を自分のプレーで表わせるようにと思っていました」。
日本一の懸かった決勝。1点をリードした延長後半から、長野はピッチへ送り込まれる。「太亮に関しては守備に信頼感がある選手なので、迷わずに使いました」(相澤GKコーチ)。終盤にエリア内から放たれたシュートに、2番が全身を投げ出して飛び込んでいく。「勝っている中で出たので、失点だけはしないように、最後のところは身体を張るとか、そういうことは意識していました」。自分にできることを、真摯に、全力で。
優勝を告げるホイッスルが鳴った時、頭の中には支えてくれた多くの人たちの顔が次々に浮かんできたという。「親とトレーナーさん、病院の先生、自分に携わってきてくれた人たちへの想いがあふれ出て、感極まって、ここに来れただけでも良かったのに、みんなのおかげで優勝までできて、本当に良かったです」。みんな彼の想いはわかっている。最高の笑顔の花が咲くチームメイトの輪の中に、2番もまるで弾むような軽やかさで吸い込まれていった。
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