『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:2つの覚悟(筑波大・加藤玄)
ゲキサカ / 2024年12月24日 12時15分
「清々しいと言えば清々しいですけど、悔しさもありますし、寂しさもあって、いろいろな感情が混じって、うまく表現できないですけど、これも実力だなという感じです」。いつもは理路整然と言葉を並べていく加藤にしては珍しく、状況を整理しきれていない様子が見て取れる。その姿にこの負けが持つ意味の大きさを実感した。
でも、本人はそれでいいと思っていた。「そもそもまだ3日後に試合があるつもりでしたし、さらにその後には決勝戦に勝つつもりだったので、2か月後にはもうJリーグが開幕して、もうそこに出ているかもしれないなんて、正直まったく実感がないですけど、今はもうこのグシャグシャな感情を自分の中で整理して、それを味わう時間も必要だなって」。
「すぐに切り替えられるタイプではないですし、この時間も大切にしたいので、ちゃんと悔しさを自分の中で消化しながら、みんなへの感謝も湧き上がってきますし、筑波でやってきた自分の取り組みも肯定してあげたいですし、それをちゃんと整理したいと思います」。話しているうちに、少しずついつもの感じを取り戻していく。
もう1か月もすれば、名古屋の2025シーズンが始動する。加藤にとっては先輩たちと切磋琢磨する日々が幕を開けるわけだが、とりわけ“再会”を楽しみにしている同じポジションの選手がいるそうだ。
「稲垣選手は『オマエみたいなヤツがグランパスに戻ってきてやらないといけないんだ』と言ってくれたんです。そもそも同じポジションですし、もしかしたら僕に定位置を奪われるかもしれない選手がそういう発言をできるなんて、本当に素晴らしい人間性の方だなって思ったんですよね」。ちょうど一回り年の離れた稲垣祥も、ここからはチームメイトであり、強力なライバル。その競争が生活へ直結する世界に足を踏み入れていく。
改めて、ここからの自分への期待が口を衝く。「こんなデカいこと言って、レンタルとかされたらダサいですけど(笑)、1年前倒しで行くからと言って、気負ってうまくいかない時間を過ごすつもりも毛頭ないですし、限りあるプロサッカー選手としてのキャリアを良い時間にするために、筑波での想いを胸にグランパスで頑張りたいなと思っています」。
プロサッカー選手としての覚悟と、アカデミー出身者としての覚悟。生半可な気持ちで選んだいばらの道ではない。でも、やる。やるしかない。この決断を後押ししてくれたすべての人たちのために、力強くチームを背負う存在に、誰もが認めるグランパスを象徴する存在に、必ずなってやる。2つの覚悟を纏った加藤玄の決意は、絶対に、絶対に、揺らがない。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に『蹴球ヒストリア: 「サッカーに魅入られた同志たち」の幸せな来歴』『高校サッカー 新時代を戦う監督たち』
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