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被災地では余った医薬品の対応が手つかずになりやすい【クスリ社会を正しく暮らす】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月24日 9時26分

【クスリ社会を正しく暮らす】

 今年2月、災害医療チームの一員として能登半島地震の被災地に入りました。2011年の東日本大震災の時もそうでしたが、私が現地入りした時期はいずれもどちらかというと災害医療を引き揚げる段階のタイミングでした。

 この時期は支援物資に過不足があり、モノやヒト、医薬品があふれているケースもあります。今回も使用期限が近く、必要性が少ない医薬品を大量に見かけることがありました。東日本大震災の時もインフルエンザ治療薬が避難所の救護所に山のようにあったことを記憶しています。

 支援物資の緊急輸送は、プッシュ型支援とプル型支援に分けることができます。発災直後は、被災地の状況や支援物資のニーズを把握することが困難なので、被災地域からの具体的な支援要求を待たずに予測に基づいて物資を供給することになります。これがプッシュ型支援です。物資を迅速に被災地域へ届けられるというメリットがある一方、被災者の要求やニーズを把握していない状況で送るため、支援物資の過不足が生じるデメリットもあります。

 これに対してプル型支援とは、支援物資のニーズ情報をしっかり捉えることができた被災地へ、ニーズに応じて物資を供給する方法です。私が行った時期は、各所で適時プル型支援に切り替えて対応されているケースも見かけました。ただ、余剰となった物資や医薬品の対応は手つかずとなりがちです。

 また、今回は2月に支援に入ったこともあり、「避難所に花粉症の薬を置いておいて欲しい」といった要望が寄せられました。ただ、これは災害医療なのか? と考えさせられたのも確かです。避難所の近隣にある薬局がすでに営業を再開している場合は、その薬局への営業妨害ともなりうるわけです。地域の経済を回すためにも、現地の薬局で購入していただくのが望ましいといえます。

 今回は避難所に配置している医薬品の回収なども行いました。しかし、同じ珠洲市でも能登半島の北側部分などでは近隣に医薬品を購入できる薬局もなく、薬局まで悪路を1時間以上もかけて移動しなければならないケースもありました。道路も崩れていたり段差があったりして、夜間の移動は非常に危険です。こういった避難所では医薬品を回収せず逆に必要な物品の配送などのお手伝いも行いました。

 支援活動では「必ずこうしなければいけない」ということはなく、臨機応変な対応がとても大切だと考えています。

(荒川隆之/薬剤師)

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