脳出血が重症で半身が完全麻痺でも本当に回復できるのか?【正解のリハビリ、最善の介護】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月24日 9時26分
【正解のリハビリ、最善の介護】#25
かつて、当院でリハビリ治療に取り組んだAさん(男性・当時39歳)のお話です。彼は身長175センチ、体重98キロの肥満体形で、高血圧もずっと放置していました。仕事はシステムエンジニア(SE)で、職場までは電車通勤。独身で両親と同居しており、趣味はゲームとのことでした。
ある日突然、右半身がまったく動かなくなって言葉も出なくなり、意識がもうろうとして救急搬送されました。診断は「脳出血」でした。搬送先の救急病院でもしばらく脳出血が続き、出血量は約78ミリリットルに及んで重症となってしまいました。
入院2日目に出血が止まり、血腫を吸引する手術を受けて、意識は徐々に回復してきました。言葉は発声できないものの、少しだけ周囲の状況を把握できるようになり、口からの食事もできるようになりました。さらに、排尿と排便の感覚もわかるようになってきました。身体の動作は全介助の状態でしたが、介護者がAさんの体を動かす際、麻痺がない左半身で協力動作ができるまでになりました。
そんなタイミングで、Aさんのご両親が「まだ若いので、何とか装具を使ってでも歩けるようにならないか。少しでもしゃべれるようにならないか。少しでも文字が読めるようになれば本人の楽しみができるので、リハビリ治療をしたい」と、当院まで相談に来られたのです。
Aさんは重症ではありますが、年齢が若いこと、すでに口から食べられるようになったこと、右半身は完全麻痺で重度の感覚障害も認めるが、左上下肢に麻痺はないこと、リハビリの意欲があること、そして脳画像で左側被殻を中心に大脳は重度脳損傷を認めたものの右側の大脳は健常であることから、「装具を装着しての杖歩行と、セルフケアの日常生活動作は自分でできるようになり、精神機能や高次脳機能も徐々に軽快してくる」と予測できました。また、言葉の機能も年単位で長期的に回復することが見込めます。
そこで、手術から33日目に当院の回復期病棟に転院となりました。高血圧症が未治療だったため、収縮期血圧120㎜Hg以下に血圧を管理して再発予防を徹底しながら、6カ月間の回復期リハ治療を計画しました。
■6カ月で自宅退院が可能に
ADL(日常生活動作)をどのように向上させていくか、歩行機能をどう獲得させていくか、上肢機能、精神機能と高次脳機能をどこまで向上できるか、言語機能をどのくらいの期間で向上させていくか。さらに、復職を実現するために何が重要で、どのような計画で復職してもらうのか。それらについて、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師、ソーシャルワーカーと相談し、計画を立てました。
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