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ラピダスは日本の半導体産業復活の先駆けになれるか…経産省全面支援でも市場の厳しい見方

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月11日 9時26分

ラピダスは日本の半導体産業復活の先駆けになれるか…経産省全面支援でも市場の厳しい見方

ラピダスの小池淳義社長(C)共同通信社

【経済ニュースの核心】

 北海道千歳市で建設が進んでいる半導体メーカー・ラピダスの次世代半導体工場が今年4月に稼働する。回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)級の半導体の試作を行い、2027年から量産に入る計画だ。「2ナノ」半導体は、3ナノと比較して計算処理速度が格段に速く、次世代のスマートフォンや高度な自動運転に欠かせない。ラピダスは日本の半導体産業復活のフロントランナーとなれるか。

 12月18日、新千歳空港で開かれたラピダスの世界最先端半導体導入式典には経済産業省の関係者や北海道知事ら100人あまりが出席した。挨拶に立った小池淳義社長は、「北海道、日本から全世界に最先端の半導体を届ける。まだ1合目だが、頂上までの確実な第一歩だ」と胸を張った。

 ラピダスが新たに導入するのは「EUV露光装置」といわれるもの。特殊な光で半導体の基板に微細な回路を焼き付けるのが特徴で、ラピダスが量産化を目指す「2ナノ」半導体の製造には欠かせない装置となる。

 だが、「2ナノ」半導体を巡る競争は激しい。「台湾のTSMC、韓国のサムスン電子は25年から2ナノの量産を開始しており、米アップルは、TSMCの半導体を使って次世代のiPhoneを生産することを視野に入れている」(メガバンク幹部)という。

 そうした遅れを取り戻すために繰り出されたのが公費による支援だ。経産省はラピダスの研究開発費に3年間で9200億円の支援を決めており、さらに政府は11月の経済対策で、半導体やAI産業を支えるための新たな財源フレームを設け、30年度までの7年間で10兆円規模の支援を行うことを盛り込んだ。「このうち、ラピダスの量産化実現にはさらに4兆円ほどの資金が必要だとして、政府による出資や金融機関の融資への保証が検討されている」(同)という。まさに政府(経産省)丸抱えの半導体復権プロジェクトだ。

 だが、経産省内部には、ラピダスの先行きを不安視する声も聞かれる。「ラピダスの2ナノプロジェクトを推進してきたのは自民党の半導体議連の面々、会長は甘利明氏だった」(経産省関係者)。だが、その甘利氏は先の衆院選でよもやの落選。工場誘致を進めた北海道5区選出の和田義明氏らも落選の憂き目に遭った。

 危機感を強めたラピダスの小池社長は、一計を案じ、経産省の元事務次官で、岸田文雄政権で首相秘書官を務めた嶋田隆氏を特別参与に招聘した。嶋田氏の天下りは、ラピダス公的支援の「見返り」か、それとも「人質」か。

 ラピダスは昨年から米シリコンバレーに営業拠点を設け、顧客になりそうな企業40社あまりと交渉を進めているが、はたして先行するTSMCやサムスン電子との競争に打ち勝つことができるのか。「そもそも工場が立地する千歳市は、輸送コストもかかり、人材など半導体関連のリソースも少ない。水質も半導体製造に向かず、失敗する可能性が高い」(市場関係者)と冷めた声も聞かれるが……。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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