南スーダンからカンボジアへ「プノンペンの奇跡」を研修ーJICA
Global News Asia / 2017年8月26日 9時15分
2017年8月21日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo72」に「世界一若い国「南スーダン」からカンボジアへ研修 水道事業復興の経験を共有」と題する記事が掲載された。
(記事)2011年に建国された世界一若い国、南スーダンから7月上旬、水資源・灌漑省大臣を筆頭に6名の水道事業関係者がカンボジアを訪れました。プノンペン水道公社で5日間にわたり、さまざまな側面から都市水道事業について研修しました。
スーダンから分離独立した南スーダンですが、建国後も紛争が続き、苦難は続いています。同じ復興の苦難を乗り越えた国として、カンボジアの経験は南スーダンの研修参加者を大いに勇気づけるものとなったようです。
南スーダンからの参加者は、ソフィア・パル・ガイ・ラーム水資源・灌漑省大臣をはじめ、南スーダンの水道事業を担う中心人物たちでした。こうした研修に、大臣が自ら参加することは大変珍しいことで、南スーダンの状況を変えたいという強い意思が感じられます。
研修では、プノンペン水道公社の経験共有として、無収水(給水したのに漏水などで料金徴収ができない水)の削減実績、カスタマーサービスの現状、水道事業体の組織、ビジネスプラン、人的資源管理などについて幹部からの説明がありました。日本の援助で建設したニロート浄水場や取 施設も見学しました。
なかでも、エク・ソン・チャン前総裁(現・工業手工芸大臣)の講義は、「貴重な体験談だった」と、参加者に強い印象を残しました。プノンペン水道公社は、エク・ソン・チャン前総裁のもと、大胆な改革を推進し、先進国並みの水道サービスを実現したことで知られます。
カンボジア内戦後の1993年当時、プノンペンの無収水率は72%にも及んでいました。また、長い内戦で水道施設が破損していたり、老朽化していたりしていたうえ、組織内には不正がはびこり、浄水場の薬品購入費さえまかなえない状態だったといいます。 エク・ソン・チャン前総裁は、「水の鬼」とも呼ばれるほど強力なリーダーシップで改革を断行しました。悪しき慣習を排除するために若手のタスクチームを作り、改革任務を負わせました。職員のモチベーションを上げるために、改善の成果が出れば給料を民間企業並みにすることを約束し、不正には徹底的に抗いました。脅しや嫌がらせも多く受けたといいます。
しかし真摯な取り組みはやがて多くの都民の協力と理解を得ます。内戦終結直後からカンボジアの水道事業に援助を続ける日本も、この改革を熱意をもって後押ししました。その結果、プノンペンの無収水率は約8.5% 、料金徴収率は99%にまでなりました。カンボジア株式市場に最初に上場したのもプノンペン水道公社でした。その歩みは「プノンペンの奇跡」とも呼ばれ、国際的にも高い評価を得ています。
今回、南スーダンの参加者からは、内戦直後のプノンペンが現在のジュバ(南スーダンの首都)の状況とよく似ていること、その状態からの復興と改革に強く感銘したことなどが伝えられました。また援助を受ける側として、ドナーとの向き合い方など、先進国での研修では得難い経験の共有もありました。
同じ体験をした国から学ぶ第三国研修は、困難に挑む南スーダンの人たちに自信と勇気を与えました。一方でプノンペン水道公社は、自らの経験 を「水事業コンサルタント」として世界に伝える 役割に、さらに自信を深めたようです。
【編集 : TY】
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