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「全力でご希望、叶えます!」…戸建て自宅のリフォームを熱意あふれる業者に発注した結果、招いてしまった〈あまりに不幸な結末〉【一級建築士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月2日 13時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

古くなってきた自宅の寿命を延ばすべく、リフォームを検討する人も少なくありません。リフォームで失敗しないためには、「工事の依頼先をしっかり考えることが大切」と、一級建築士・高橋みちる氏はいいます。高橋氏の著書『やらなければいけない一戸建てリフォーム』より、リフォームにおける施工業者選びについて詳しく解説します。

リフォームの施工業者、どう選ぶ?

何の工事をしたいかがおおよそ固まったら、次は「誰に工事をしてもらうか?」を考えなければなりません。これ、皆さん本当に悩ましいところだと思います。依頼先を選ぶという初期選択を間違えると、結果として「失敗リフォーム」につながる可能性が高まってしまいます。

例えばマンション専門のリフォーム会社に一戸建てのリフォームをお願いしたら、どうなると思いますか? 「うちはマンションがメインですから」と断られることは滅多にありません。担当者がやってきて、全力であなたの希望を叶えてくれようとします。あなたはその熱意に感動し、信頼を寄せることでしょう。

しかし、熱意や一生懸命さだけでは乗り越えられないのが、知識と経験です。マンションは構造体であるコンクリートの壁以外であれば、内部の間仕切り壁は自由に変更することができます。しかし、木造の一戸建ては、内部の壁一つ一つも構造体として家全体を支えているため、壁や柱の位置を変更するにはそれなりの計算や補強を検討しなければなりません。

けれども、マンションしか扱わないその担当者は、マンションと同じように自由に壁の位置を変更し、あなたを魅了するようなプランを全力で作ってくれるかもしれません。その結果、必要な壁を撤去してしまい、家の耐力に問題を抱えることになってしまったら、あまりにも不幸な結末……では済まされない話です。

残念なことですが、このようなことは少なからず現実に起こっています。

新築ならば確認申請と言って、計画に違法性がないかどうかを着工前に第三者機関が確認するシステムがあります。しかし、リフォームでは増築などがともなわない一般的な工事の場合、その計画の妥当性を第三者が確認するシステムがありません。もちろんリフォームによって違法状態にされてしまったなら、後から施工業者と裁判などで争うことも可能ですが、そこには大変な労力がかかってしまいます。

自分がその当事者にならないために必要なことは、第一に「依頼先を間違えない」ことです。もっと具体的に言えば、「頼もうとしている工事が得意な業者に依頼する」ことです。というのも、リフォーム業者というのは世の中に数多く存在しますが、皆それぞれに得意・不得意分野というのがあるからです。

先にお話しした事例は、マンションリフォームが得意分野の業者に一戸建てという不得意分野のリフォームを頼んでしまったのが失敗の原因でした。では、得意・不得意分野を見極め、間違いのない依頼先探しをするにはどうしたらいいのか、見ていきましょう。

まずは「家を建てた会社」を調べよう

まず、あなたの家を一番良く知るオールマイティーなスペシャリストがいます。あなたの家を建てた会社です。

建てた会社とは、建築の請負契約を交わした相手のことです。建売住宅の場合は不動産業者と売買契約を交わしているかもしれませんが、その場合は不動産業者が自社で建てている場合もありますし、協力業者の工務店が建てている場合もあります。誰が建設したのかわからない場合は、新築時の「建築確認申請書」を見れば、工事施工者を調べることができます。

建てた会社がわかったら、まずはそこに問い合わせてみましょう。年代によって工法や仕様が決まっている場合が多いため、新築年月を言えば「あぁ、その年代の方からこういうご要望は多いですね」なんて話が通じることもあります。

新築時の設計資料は法律で15年間(2007年以前は5年間)の保存義務が定められていますが、その期間を過ぎていても資料が残っている場合も多いですし、建てたときの現場監督がまだ在籍している場合もあります。あなたの家についてゼロから完成まで関わり、最も知り尽くしている相手です。何かあった場合に、最も正解に近い答えを導き出してくれるパートナーと言って良いでしょう。

時々、「新築時に嫌な思いをしたので、もうあの工務店とはお付き合いしたくない」というような話を耳にします。建築というのは人の手で造り上げるものですから、担当者の不手際によって嫌な思いをしたり、施工ミスによって不信感を抱いたりなどの経験された方も多いかもしれません。

しかし、それはどこに依頼しても起こり得るリスクです。担当者の対応に不満があるなら担当を変更してもらうこともできますし、施工ミスが心配であれば第三者機関による検査などを利用するという方法もあります。

建てた会社と縁を切るというのは、あなたの大切な財産である家の主治医を失うようなものです。既に倒産していたり、存続していてもリフォームの対応を断られたりしたなら他を探すしかありませんが、そうでなければ一番に相談する相手は「建てた会社」と考えるのがベストです。

また、ハウスメーカーで建てた方は特に注意が必要です。ハウスメーカーというのは独自の技術基準を持っており、自社の設計ルールに従って緻密な計算の基に造られているものです。構造図面は企業秘密として施主にも渡されない場合がほとんどですが、リフォームでは構造図面なくして計画を立てることは極めて困難です。

つまり、ハウスメーカーで建てた家は、建てたハウスメーカーでなければ適切なリフォームを行うことは難しいということです。ハウスメーカーで建てた方は、基本的にすべてのリフォームやメンテナンスはそのハウスメーカーに依頼すると考えた方が良いでしょう。

知っておきたい「4種類のリフォーム業者」

そうは言っても、建てた会社がもう存在しない、人手不足などの理由でリフォームの対応をしてくれない、どうにも不信感が拭えない、などという場合は他を探すしかありません。リフォーム業者は世の中に数多く存在しますので、その中から選ぶ方法を考えていきましょう。リフォーム業者は大きく、次の4種類に分けられます。

Ⅰ.ハウスメーカー系

Ⅱ.地元工務店

Ⅲ.リフォーム専業者

Ⅳ.専門業者

この4種類の業者は、[図表1]のような関係になっています。

Ⅳ.専門業者とは、塗装屋、タイル屋、防水屋、左官屋、屋根屋、板金屋、サイディング屋、設備屋、電気屋、ガス屋等々、実際の作業を行う職人を抱えている業者のことです。リフォーム工事には複数の専門業者が関わることがほとんどですので、各専門業者を統括する監督者が必要になります。

その監督者に当たるのが、Ⅰ.ハウスメーカー系Ⅱ.地元工務店Ⅲ.リフォーム専業者です。Ⅰ.ハウスメーカー系とⅡ.地元工務店は基本的に新築も行っているところが多いため、一戸建てであれば全般に詳しい知識を持っており、依頼先として安心感はあります。

ただ世の中にはⅢ.リフォーム専業者の数も多く、こちらは工事内容によっては知識の偏りが大きい場合もあるため、依頼する際には注意が必要です。では、Ⅰ.~Ⅲ.の特徴について、[図表2]で詳しく見てみましょう。

Ⅰ.ハウスメーカー系とは、新築を行っているハウスメーカーに属する、リフォームを行う部門や子会社のことです。自社で施工したオーナー専門の場合もありますが、一般建物のリフォームを主力としている場合も多くあります。基本的に工事は下請けの工務店などに任せることが多いため、中間管理費がかかり、費用相場は高めになります。

しかし、高付加価値のサービスに力を入れていることが多く、設計提案力・保証・品質・ブランドの信用力などを考えると、出来上がりの満足度や長い目で見た費用対効果も期待できると言えます。

デメリットとしては、見積りの算出やアフターサービスなど、何かと対応に時間がかかることが多いという点が挙げられます。これはハウスメーカー系の窓口となる担当者から、実際に現場で動く施工業者までの間に関わる人が多いためです。ハウスメーカー系とリフォームを進める場合は、打合せなどの準備期間を長めに考えておくと良いでしょう。

Ⅱ.地元工務店とは、地域の専門業者を取りまとめ、新築やリフォームの現場を一括で管理・監督する業者のことです。ハウスメーカー系やリフォーム専業者などの下請けとなる場合も多いですが、自社で独自に営業活動を行っている場合もあります。地域密着で活動していることが多く、何かあったときには素早い対応が期待できる安心感もあります。

ハウスメーカー系に比べれば費用は抑えめとなる場合もありますが、その分提案力が十分でないなどの弱点もあります。もちろん設計や提案に力を入れている地元工務店もありますが、その場合はその設計料が計上されるため、それなりの費用相場になります。地元工務店に依頼するなら、ちょっとした不具合でもすぐに対応してもらえるフットワークの良さや、掛かりつけのお医者さんのように末永いお付き合いができそうなところを選ぶと良いでしょう。

Ⅲ.リフォーム専業者とは、ハウスメーカー系や地元工務店が新築から派生してリフォームを行うようになったのに対し、最初からリフォームを専門としてできた会社です。リフォーム業は500万円未満の工事代金であれば建設業の許可も不要なため、新規参入のハードルが低く、多種多様・大小様々な業者が存在します。

中でも皆さんにご注意いただきたいのは、特定の工事に特化したリフォーム専業者に依頼する場合です。リフォームは部分的な工事の需要も多いため、専門業者がリフォーム業を始めるケースが多くあります。例えばキッチンやユニットバスの交換などを行う設備の専門業者が、内装や木工事などのサービスを始めて、設備機器類の交換がメインのリフォーム専業者になったり、塗装の専門業者が足場や防水などのサービスを始めて、外装がメインのリフォーム専業者になったりという形です。

この形態では中間管理費などが抑えられるため低価格が狙えますが、建築士などの資格を持った現場監督がいなかったり、現場管理者の知識に大きな偏りがあったりする場合には、知識不足による不良工事が起こる可能性もあります。低価格というのは魅力的ですが、省かれたコストが重要なものであったら、それは安かろう悪かろうとなってしまいます。

一戸建てのリフォームはマンションと違い、構造体の修繕も同時に考えなければならないため、構造体の修繕についての知識を持った監督者が必要です。業種別に専門業者に直接依頼することを業界用語で「分離発注」と言い、それはコストダウンの王道です。

しかし、省かれたコストは監督や設計の経費ですから、そこに費用をかけないことは皆さんにとって大きなリスクとなる可能性があります。

高橋 みちる リフォームコンサルタント アールイーデザイン一級建築士事務所 代表

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