体を労わってしたことが「糖尿病」の原因に!?…「肝臓脂肪」と「糖尿病」の切っても切り離せない関係とは【専門医が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月6日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
糖尿病を防ぐには、脂肪を落とすことが重要です。糖尿病の予備軍である境界型糖尿病に加え、脂肪肝と診断された広人さん(仮名)との会話を通して食習慣を見直しながら、落とすべき脂肪について見ていきましょう。尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、実際のエピソードとともに糖尿病を発症しやすくする習慣について解説します。
糖尿病を防ぐには肝臓から脂肪を落とす
僕の肝臓には脂肪が多いことがわかった。肝臓なんて、正直、今まで意識したことなかった。でも、そんなに脂肪の多い体ではないし、肝臓の細胞の中の脂肪なんてどうやって減らすんだろうか……。きちんと聞いておこう。
「すみません、僕、そこそこ筋肉質で脂肪は少ないほうだと思うのですが……」
「体につく脂肪には種類があって、肝臓脂肪のほかに皮下脂肪と内臓脂肪がある」
「聞いたことがあります。でも、違いはよくわかりません」
「皮下脂肪は名前のとおり、脂肪が皮下組織につく脂肪のこと。太ももやお尻まわり、下腹部などについている、触ってわかる指でつまめる部分。広人さんがイメージしたのはこの脂肪かもしれないですね。一方、内臓脂肪は胃や腸へ流れる血管の入った膜にたまっていく脂肪のこと。メタボと言われる病態の診断基準の1つになる脂肪です」
「えっと、じゃあダイエットをすれば、この3つの脂肪が減っていくんですね」
「まあそうなんですが、減っていくタイミングには時間差があります。減量すると、①肝臓脂肪→②内臓脂肪→③皮下脂肪の順で落ちていきます。見た目に表れるのは、皮下脂肪が落ちてから。でも、広人さんはまず肝臓脂肪を落としたいから、減量すれば効果が出やすいというのは朗報でしょ?」
そうは言っても、どうすれば肝臓脂肪は落ちるんだろうか?
内臓脂肪より肝臓脂肪を落とせ! 糖尿病予防には、肝臓脂肪を減らすことが優先。
糖尿病の原因になっていたドリンク
「ところで、毎日暑いですねぇ。さすがに、冷房なしでは寝られないですよね」
「はい。外回りが多いので、熱中症も心配で……」
「それは大変ですね。水分補給に何を飲んでいます?」
「かなり汗っかきなので、スポーツドリンクを毎日飲んでいます。塩分も含まれていて熱中症予防になると聞いています」
「ちなみにスポーツドリンクはどれくらい飲みますか?」
「500mlのペットボトルで2本は飲んでいますかね……」
「なるほど。広人さんは、コーヒーにシュガースティックを20本入れる人ですね」
「20本!? そんなに入れませんよ。コーヒーはブラックでも大丈夫です」
「早速、広人さんの高血糖の原因の1つが見つかりましたよ」
「…………」
「血糖値を上げるのは糖質を摂取したときですが、要は砂糖です。スポーツドリンク500mlには、糖質が30g以上含まれているものがあります。シュガースティックに換算すると10本分になります。だから、広人さんの場合は、1日で20本分です」
「…………」
「しかも、飲料だと一気飲みをすることも多いし、血糖値にダイレクトに反映されやすい。血糖値スパイクの温床と言えます。きちんと食事がとれていれば、麦茶で十分なんですよ」
「そんなに甘さを感じていなかったので、かなり衝撃を受けています」
「いつも食べている、飲んでいるものについて正しく知ることは、高血糖も脂肪肝も改善する重要な助けになりますよ」
「先生、塩分についてはどうなんでしょう?」
「スポーツドリンク500mlには、塩分が0.6g程度含まれていて、たくあん2枚分に相当します。よほど発汗が多いときには、麦茶に漬け物を少々加えればいいだけの話。余計な糖質を摂る必要はありません」
「水なら飲んでいいですか?」
「もちろん。血糖値を一定に保つためにも、こまめに水分補給をすることは大事です。ただし、水かお茶かブラックコーヒー限定です」
「先生、エナジードリンクを飲むのもだめですか?」
「人間、だめって言われるとつらくなるからだめとは言いません。でも、この事実を伝えます。カルガリー大学の研究チームの報告によれば、カフェインを含むエナジードリンクとカフェインなしドリンクを比較すると、カフェインを含むエナジードリンクを飲んだ群は、飲料後の血糖値が24.6%高かったそうですよ。もちろん糖質も含まれています。眠気ざましなどでカフェインを摂りたいなら、ブラックコーヒーで十分でしょう。それでも、エナジードリンクを飲みますか?」
スポーツドリンクもエナジードリンクも好きだ。でも、体のためと思って飲んでいたところもある。それが、かえって体に負担をかけていた。言葉を失った。
「スポーツドリンクもエナジードリンクも、脳がおいしいと感じるように味が調整されています。企業努力の賜物ですね。でも、その戦略にはまってしまうと、将来の健康を犠牲にしかねないということが伝わったでしょうか」
「……はい」
「今日はここまでにしましょう。次回、もう一度、2週間後くらいにお目にかかれますか? そのときに当面の目標と食事の仕方について、さらに詳しく検討していきましょう。ちなみに広人さんは、毎食、自分で食べるものを選んでいますか?」
「朝と夜は妻が作ってくれます。昼は外食で麺類が多いです」
「そうですか。改善できることがまだありそうですね。であれば、奥さんもご一緒に来てもらえるといいですね」
「実は今、妻は妊娠中で……」
「それはそれは。なら、もちろんムリは禁物です。奥さんに話をしてもらってから、来院日の相談をしましょう。お子さんのためにも、パパは健康でいないとですね」
「今日は、ありがとうございました」
お礼を伝えて病院を出た。外はやっぱり暑い。
自動販売機でミネラルウォーターを1本購入し、喉の渇きを潤した。頭は少しふわふわしていたが、いろんなことが腑に落ちた。妻に何から話そうか。
砂糖水を毎日飲むと効率よく脂肪肝になる。スポーツドリンクはまぎれもない砂糖水。
尾形哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医
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