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増税、年金改悪…“重税国家ニッポン”がひた走る「絶望への道」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月30日 11時15分

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「確かに日本の税負担は重いが、世界的にみるとそれほどでもない」…税率だけ見れば確かにそうですが、重税に見合った手厚い福祉サービスが受けられる北欧などと違い、日本では教育資金の費用をはじめ、さまざまな費用が自己負担となっているなど、実際には「重税国家」の道をひた走っています。増税や年金改悪でこれから日本はどうなっていくのか、山田順氏の書籍『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より、抜粋してご紹介します。

消費税増税が経済の足を引っ張った

消費税は、2014年4月に5%から8%へ、2019年10月に8%から10%へと引き上げられた。この2回の増税は、民主・自民・公明の3党合意の下に行われたものだから、民主政治である以上、国民の意思だ。しかし、日本経済の足を完全に引っ張った。

消費税は、1989年、バブル最後の年に新設され、税率3%で導入された。その結果、この年と翌年の1990年の税収は上がったが、翌々年から経済は失速した。これは、バブル崩壊に加えて消費税の導入によって消費が低迷したからだ。以後、日本は長期不況に陥った。

1997年、消費税は3%から5%に引き上げられた。このときも、その年の税収は上がったが、翌1998年にすぐに失速している。

これは、じつに簡単なパターン認識である。「消費税を上げると1~2年は税収が上がるが、その後は下がる」ということだ。それなのに、当時の安倍政権は〝地雷を踏む〟ことを選んでしまった。

消費税増税の理由の一つとして言われたのが、「日本の消費税の税率は欧州諸国に比べてまだまだ低い。だから増税の余地がある」というものだった。

しかし、これは真っ赤なウソだった。

たしかに、欧州諸国の付加価値税(VAT)は高率で、当時もっとも高いハンガリーが27%、次いでアイスランドが25.5%、クロアチア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが同率で25%となっている。さらに、フランス19.6%、ドイツ19%、英国17.5%だから、日本の8%に比べたら高いのは間違いなかった。

しかし、欧州諸国は食料品など生活必需品には軽減税率を導入して、税率を低く抑えていた。

たとえば英国では食料品、 医薬品などの税率はゼロであり、フランスも医薬品は税率2.1%でしかない。 アイルランド、オーストラリアなども食料品の税率はゼロだった。

そこで、政府は日本も軽減税率を導入し、食料品などの税率は8%に据え置いた。しかし、この8%ですら、すでに十分に高く、日本経済は大きく失速した。それなのに、政府内には、今後さらに税率を上げようとする動きがある。

増税に加え年金改悪で国民生活を破壊

岸田政権になってから、「防衛費倍増」「子ども予算倍増」など、「倍増」のオンパレードになった。どれも、緊縮を行わないなら、国債発行か増税するほか手がない。

すでに、防衛費倍増問題では、復興特別所得税の延長や、所得税、たばこ税、法人税などで1兆円を増税する方針が決められた。これは、2024年度から段階的に実施される。

それとともに、〝隠れ増税〟も進んでいる。健康保険料と介護保険料の引き上げ、年金加入期間の延長と支給年齢の引き上げなどだ。

国民健康保険料は2022年4月に上限額が3万円引き上げられたばかりだが、2023年4月からさらに2万円引き上げられた。年金のほうは、2024年に控えた5年に1度の年金財政検証に合わせて、数々の増額メニューが検討されている。

まずは、国民年金の加入期間を40年から45年に延ばす。年齢で言うと現在の60歳から65歳に引き上げる。保険料を5年間長く払わせるためだ。

そして、厚生年金の被保険者期間を「70歳まで」から「75歳まで」に延ばす。さらに、厚生年金のマクロ経済スライド期間を2033年度まで延長する。

こうした〝年金改悪〟のなかで、年金受給の高齢者にもっとも過酷なのは、マクロ経済スライドの延長だ。もともと年金制度は、物価や賃金が上昇すると年金もいっしょに上昇することになっていた。だから、インフレが起きても年金が実質的に減ることはなかった。

しかし、マクロ経済スライドによって、物価が上がっても年金の増額は抑制され、実質的には目減りするようになった。マクロ経済スライドは、本来なら2025年度に終了する予定だったのを10年弱も延長するのだ。

これが実現すると、月額約2万円の減額、20年間で400万円超の大幅カットになる。総務省の家計調査では、年金暮らしの夫婦2人世帯の支出は月額約27万円となっているので、高齢者世帯の暮らしはたちまち行き詰まる。

「老後2,000万円必要」と言われてきたが、2,000万円でも足りなくなる。

税金の支払い手がいなくなる未来

2022年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)が、前年比5.1%減の79万9,728人で、1899年の統計開始後初めて80万人を下回ったことが、各方面に衝撃を与えた。

2023年も減少は止まらず、出生数は75万8631人で8年連続の減少となり、過去最低だった2022年から4万1097人も減少した。

この少子化のペースは、政府機関の推計より10年ほど早い。この傾向が続けば、年金をはじめとする社会保障制度や国家財政は予想以上に逼迫する。

こうなると、生産年齢人口も加速度的に減少する。それは、税金を払う納税者が加速度的に減少することを意味する。[図表1]は、1950年を起点とした日本の人口の推移で、2022年より先は推計だが、この推計はいまや成り立たなくなった。推計より速いスピードで少子化が進んでいるからだ。

このグラフを眺めて、日本の将来を想像すると、絶望的になる。

意のある若者は重税国家から出て行く

中国の諺(ことわざ)に、「苛政(かせい)は虎(とら)よりも猛(もう)なり」というのがある。これは、重税を課す過酷な政治は人を食う虎よりも恐ろしいということだ。

泰山(たいざん)の近くを通りかかった孔子(こうし)は、墓に向かって泣いている婦人を見つけ、弟子の子貢(しこう)を使わせて、なぜ泣いているのかと尋ねさせた。その婦人はこう言った。

「私の舅(しゅうと)は昔、虎に殺されました。夫も虎に殺されました。息子も虎に殺されました」

それで、孔子が婦人に「どうしてこの地を離れないのか」と訊くと、婦人はこう答えた。

「この地には重税がないのです」

この諺が意味するところを私見で解釈すれば、重税国家から人は逃げ出すということだろう。

すでに、「重税ニッポン」に嫌気がさして、多くの富裕層や有能なビジネスマン、起業家たちが国を出ている。有為な若者たちも国を出ている。とくに本気でスタートアップを目指す若者は、海外を目指す。昔の若者は英語が苦手だったが、いまの若者はそうではない。また、ITテクノロジーを使えば、語学の壁は乗り越えられる。

シンガポールなどのタックスヘイブンは、日本のような官僚統制国家では「悪」とされている。しかし、本当は、重税国家の理不尽な徴税から逃れるための「自由な地」とも言える。

このまま日本が重税国家路線を突き進めば、タックスヘイブンばかりか、能力を認められる国、高い収入が得られる国に、多くの国民が国を出ていくだろう。

とくに、将来に希望が持てなくなった若者たちが、本気でこの国を出たら、日本はどうなるのだろうか。

山田 順 

ジャーナリスト・作家

※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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