未経験の従業員に仕事を任せたい…これさえ書いてあれば立派に“マニュアル”として成立する「魔法の言葉」とは【士業・コンサルタント必見】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月12日 7時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
士業やコンサルタントのビジネスは、1人でやっていると「(限られた)自分の時間」がボトルネックになります。そのため、チームをつくって従業員に仕事をまかせていく必要があります。しかしながら、専門性の高い作業を資格のない従業員に任せるのは不安でしょう。そこで本記事では『オーナー士業(R)になって、たちまち年商1億円を突破する方法』(すばる舎)から、著者の〈あべき光司氏〉が、時間をかけずに精度の高い「マニュアル」をつくるコツについて解説します。
マニュアルがあれば、資格のない従業員に仕事を任せられる
士業やコンサルタントのビジネスでチームを作りオーナー化するときのポイントは、「仕事を人につけず、人を仕事につけること」。つまり、自分でやらなくてよい仕事を人にまかせることです。
「従業員に仕事をまかせたいけれど、専門的な仕事をどうやってまかせるかが難しい」と悩まれている士業の方も多いようですが、未経験の従業員にでも仕事を渡すことはできます。
そのためになくてはならないのがマニュアルとチェックリストです。マニュアルは、書いてあるとおりにやったら作業が終わる作業手順書のこと。いっぽう、チェックリストとは、作成した資料や成果物が正しくできたかどうかを確認するための資料のことです。
では、どうやって未経験の従業員に仕事を渡したらいいのか? これまで私がやってきた、未経験の従業員への仕事の渡し方についてお伝えします。
そもそも私がマニュアルやチェックリストをつくりはじめたきっかけは、私が税理士事務所をはじめた当初に働いていた従業員3名全員が、税務業務が未経験だったことに端を発していました。
しかも私は、自分で言うのもなんですが、もともと税理士業務が苦手で、決算書や申告書をつくるときに細かいところをよく間違えました。
お客様には表立って迷惑をかけない程度の小さい間違いとはいえ、税務署から修正を求められることもあり、手間も時間もよけいにかかります。それをなんとかしたくて、決算書や申告書を私がつくった後、従業員にチェックをしてもらおうと思ったのです。
しかし、「チェックしてね」と言っただけでは、税務の知識がない従業員には、なにをチェックしていいのかがわかりません。
そこで彼らにもわかるように、たとえば「A表の1列めの3番めの項目と、5列めの4番めの項目の数字がいっしょかどうかを確認してください」といった個別具体的なチェック項目をすべて書き出したマニュアルと、正しくできているか確認するためのチェックリストをつくりました。
それらを使って従業員たちに10か所くらいの数字のチェックをお願いしたのです。
従業員たちは、はじめこそ〝なにをやっているのかわからない〟といった感じでしたが、マニュアルとチェックリストを見ながらのチェック作業を続けているうちに慣れてきて、なんのためのチェックか、しだいに作業意図も理解し、少しずつ自分の仕事の範囲を広げていってくれました。
私がつくった簡単なマニュアルもチェックリストも、従業員が使うたびに必要なことを書き加えて、どんどん更新されていきました。
マニュアルやチェックリストをつくるときにも大切な考え方が「10点合格」の考え方です。
マニュアルもチェックリストも最初から完璧なものをつくろうと構えるのではなく、100点中10点でも5点でもいいので、少しでもできたらすぐにリリースして使ってみます。
後は、従業員が使いながらブラッシュアップすることで、どんどんよいものになっていきます。「リリース&ブラッシュアップ」です。
多くの会社ではマニュアルをつくるときに、はじめから「100点満点の完璧なものをつくって、そのとおりやらなければいけない」と思っているようです。
しかし、マニュアルは、見てそのとおりにやるためだけの〝完全無欠のお手本〟ではありません。使うたびに必要に応じて修正したり書き加えたりして、つねに更新していく〝永遠のたたき台〟だくらいに思って運用と改善を重ねるほうが、かえって早く良いマニュアルができます。
マニュアルは、いきなりきちんとつくる必要はない
しかし、マニュアルはつくらせるものだとか、つくってから育てるものだ、といきなり言われても、すぐにはどうしたらいいかわからないかもしれません。
どうしても無意識のうちに「きちんとつくらなければならない」と、考えてしまうからです。
私はクライアント先でマニュアル作成をするときには「10点合格でいいから、まずはじめましょう」と言っています。そのときに、クライアントにいつも最初に教える魔法の言葉があります。
マニュアルにこの言葉さえ書いてあれば、もう立派にマニュアルとして成立する、という魔法の言葉です。
上のマニュアル([図表1])を見てください。詳細欄に「所長に聞く」と、ひと言だけ書いてあります。これがマニュアル作成をスムーズにすすめる魔法の言葉です。
所長あるいは社長が最初につくるマニュアルは、このひと言だけ書いてあればいい。
たとえば、今回「受取利息を総額に修正する」という作業のマニュアルをつくるとします。新しく担当になった人が、やり方がわからないからマニュアルを見ると、「所長(社長)に聞く」と書いてあります。
新しい担当者は、所長(社長)に「(マニュアルに書いてあるので)所長(社長)、やり方を教えてください」と聞くはずです。
そこで、所長(社長)はその手順を口頭で教えてあげてください。
担当者は、所長(社長)から教わったことをマニュアルに自分で書き足して、自分が納得するマニュアルをつくって、所長(社長)に「これでいいですか」と確認します。
所長(社長)は、仕事を引き渡すときに、担当者にマニュアルをつくるために内容の説明をしたら、担当者に「マニュアルを更新して、できたら見せてください」と必ず伝えます。
担当者が「できました」と見せにきたら、それで合っているのか違っているのかを伝えて、修正してもらったり、足りないところを書きたしてもらったりします。それを繰り返していくと、だんだんと精度の高いマニュアルができあがります。
所長(社長)がつくるマニュアルには、どんなものでも「所長(社長)に聞く」というひと言だけ書いておけばいい。この「所長(社長)に聞く」は本当に便利な言葉です。
たとえば、20ステップぐらいあるような複雑な作業のマニュアルをつくるときにも、とりあえずはそのうち5つまでを書いて、その下に「所長(社長)に聞く」と書いておきます。
それでもマニュアルとしては成り立ちます。
もしも、1時間も2時間もマニュアルづくりに時間をかけてなどいられないと思う人は、5分でできますので「所長(社長)に聞く」と1行だけのマニュアルをつくってみてください。
なんでも0(ゼロ)から1(イチ)をつくるときが一番大変です。マニュアルも、「所長(社長)に聞く」というマニュアルさえあれば、その後のマニュアルづくりはものすごくラクになります。
マニュアルの残りの部分は、必要に応じて担当者が聞いてつくって、いつのまにか立派なマニュアルができあがります。
このように、最初から完璧を求めないこともマニュアルを上手につくっていくコツです。
あべき光司
EMP税理士法人 代表
国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ
※本記事は『オーナー士業(R)になって、たちまち年商1億円を突破する方法』(すばる舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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